Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

2018年 映画ベスト

2018年に見た映画のベスト10です。やや反則的に2作同時に挙げている場合もありますが、同じ監督で、しかも同じような時期に見たということでセットに捉えています。映画館で見た新作映画と、個人的に初めて見た映画、それぞれベスト10を選びました。

新作ベスト10

  1. 1987、ある闘いの真実チャン・ジュナン監督、韓国、2017年【本国の公開年、以下同】)
  2. バッド・ジーニアス 危険な天才たち(ナタウット・プーンピリヤ、タイ、2017)
  3. ヘレディタリー 継承アリ・アスターアメリカ、2018)
  4. ブラックパンサーライアン・クーグラーアメリカ、2018)
  5. ペンタゴン・ペーパーズ / レディ・プレイヤー1スティーブン・スピルバーグアメリカ、2018)
  6. 夜の浜辺でひとりホン・サンス、韓国、2016) / それから(同、2017)
  7. 名もなき野良犬たちの輪舞(不汗党)(ピョン・ソンヒョン、韓国、2017)
  8. 恐怖の報酬 リバイバル上映(ウィリアム・フリードキンアメリカ、1977)*オリジナル版は今年が初公開
  9. 焼肉ドラゴン鄭義信、日本、2018)
  10. ライフ・オブ・ザ・パーティー(ベン・ファルコーン、アメリカ、2018)*劇場公開無し、日本ではDVDスルー。飛行機で観賞。

 

新作以外で、初めて見たもの ベスト10

  1. 新しき世界パク・フンジョン、韓国、2013)
  2. カリフォルニア・ドールズロバート・オルドリッチアメリカ、1981)
  3. お嬢さんパク・チャヌク、韓国、2016*日本では2017年公開)
  4. ラブ&ソウル(城定秀夫、日本、2012) / 韓国に嫁いだ女(同、2015)
  5. ジョーズスティーブン・スピルバーグアメリカ、1975)
  6. 男たちの挽歌ジョン・ウー、香港、1986)
  7. イット・フォローズデヴィッド・ロバート・ミッチェルアメリカ、2014*日本では2016年公開)
  8. ビフォア・サンセットリチャード・リンクレイターアメリカ、2004)
  9. ソウルへGO!(ベンソン・リー、韓国・中国・アメリカ、2016)
  10. 風に濡れた女塩田明彦、日本、2016)

映画を見る方法がいよいよ変わってきた

2018年には、映画館・ストリーミング合わせて70本くらいの映画を観ました。

今年はTSUTAYAの会員証の有効期限が切れても更新しなかった。NetflixとかAmazonプライムで事足りると判断したので。でも、そのせいで60年代・70年代の東映の映画とか見る機会減ったかも。Netflixとかにもけっこうあるけど、やっぱりTSUTAYAでパッケージを見て選ぶことが多かったので。

映画館で見た映画で印象に残ったのは、『クレイジー・リッチ・アジアンズ』と『カメラを止めるな』。

前者はアメリカの場末の映画館で観賞。5人くらいしかいなかったけど、なかなか反応良くて楽しかった。

カメラを止めるな』は隣の客の笑い声が大き過ぎて… 笑うたびにビクッとなるくらい。見ていてきつかった。

あと、『恐怖の報酬』と『新しき世界』は特集上映で見ることができた。ずっと見たかった映画をスクリーンで、いいタイミングで見れて嬉しかったですね。

 

hunihu2.hatenablog.com

 

凄まじかった『1987』

1番泣いたのは、一位にあげた『1987、ある闘いの真実』。

f:id:kanhuni:20181226071458j:image

これは『タクシー運転手』くらい日本でも話題になっていいはずだけど…。咳き込むくらい泣いてしまった。カン・ドンウォンの憂いのある演技には痺れました。儚い…

f:id:kanhuni:20181226075646j:image

本作は1987年の韓国の民主化運動を描いた映画ですが、メディアや文化人を弾圧していた朴槿恵政権下では、製作過程に大変な困難があったようです。極秘裏に製作を進めていたとか。

そんな状況にも関わらず、もの凄い豪華なキャストっていうね。キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、キム・テリ、ソル・ギョング、ヨ・ジング…。他の韓国映画にもよく出てる、顔なじみの出演陣たち。気概のある映画人達だったんだなと感慨深い。30年前の話とはいえ、もの凄く現代とシンクロしていて、異常にテンションの高い映画でした。アクチュアルすぎるというか。そもそも、30年前ってけっこう最近とも言える。関係者達は存命なわけですし。以下の記事や、「セッション22」での特集も非常に興味深かったです。

「韓国のタブー」を映画化 カン・ドンウォンは自ら「出たい」~「1987、ある闘いの真実」:朝日新聞GLOBE+

【音声配信】「韓国映画『1987、ある闘いの真実』〜1987年、軍事政権を終わらせた韓国の民主化闘争を特集」チャン・ジュナン監督×真鍋祐子×荻上チキ2018年9月13日(木)(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

 

見た後すぐに書いた感想です。 

hunihu2.hatenablog.com

 

あと、個人的にはファン・ジョンミン主演『国際市場で逢いましょう』(ユン・ジェギュン、韓国、2014)を見たときのモヤモヤが晴れました。というのも、『国際市場で逢いましょう』は『フォレストガンプ』的に韓国の現代史を描いた映画だったのですが、当時の映画評で「軍事独裁から民主化へ、という韓国の現代史が全く描かれていない」という指摘があったのですね。平たく言うと「歴史修正映画」だという批判でしょう。以下は3年前のブログ記事で、そのことにも少し触れています。

hunihu2.hatenablog.com

まあ、3年前に見たときは普通に涙を流しちゃったりなんかして、いたく感動してしまっているのですが…(笑) 

今思い返すと、まず、ベトナム戦争の描き方とかは本当に最悪だったなと思います。

それと、特に『1987』を見た後では、「民主化運動に触れずに現代史なんて描けるのか」という当時の映画評で読んだ指摘は至極まっとうなものだったと感じます。ものすごい保守的な映画だったんだなと。3年越しに、ようやく実感として理解できました。

このように、同じ韓国現代史を描いているはずが、公開年の違いなのか、現在の韓国社会の雰囲気の違いなのか、映画として全く違うものになるというのも興味深いです。現代史自体のダイナミックさというのもありますが、公開年が3年違うだけで、全く違う論調の映画がそれぞれ記録的なヒットを飛ばすというのも面白い。

現代史を描いた映画ならなおさら、「何がどのように描かれたか」よりも「何が描かれなかったか」に注意して見る必要があるなぁと思いました。そのためには背景知識とか、いろいろ勉強が必要ですが。ここ数年で特に集中して見るようになり、だんだんと把握はできるようになったかなとは思います。以下の本とか参考にして、これからもちょくちょく勉強は続けていきたい。

韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史 (キネマ旬報ムック)

 

見返した韓国映画

今年も面白い韓国映画をたくさん見ました。改めて見返した『グエムル 漢江の怪物』と『サニー』も良かったなぁ。

f:id:kanhuni:20181226073718j:image

グエムル』は本当に10年ぶりくらいに見返すと、印象が全然違いました。ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演ということで、やっぱりすごく社会性のある映画なんですよね。中学生くらいの頃に見た時は「怪物こわい」くらいしか分かりませんでしたが、今見ると、「韓国におけるアメリカの存在」の描かれ方が興味深いです。

今年は日本版リメイクも作られた『サニー』。日本版には色々とモヤモヤしてしまったので、慌ててオリジナル版を再見した。

f:id:kanhuni:20181226074222j:image

オリジナルの『サニー』は10回以上見たけど、まだ泣いてしまう。見るたびに発見がまだあるし、今回も細かいポイントに色々気がついた。日本版との比較で見たことも関係している。オリジナル版はやっぱり大好きな映画だと再確認した。

 

hunihu2.hatenablog.com

 

Netflixでたまたま見つけた『マルチュク青春通り』も良かった。以下の記事に長めの感想を書いています。

hunihu2.hatenablog.com 

あと、これもすごく久しぶりに『猟奇的な彼女』 を見た。もう15年以上も前の映画なのか。今見ても面白いし、今の韓国との違いとかも見えてきて興味深い。ストリーミングサービスにあると、ついつい昔見た映画を見返してしまう。しかも、細かい内容をほとんど忘れていたりして、また新鮮な気持ちで見れるし。

 

初めて見たタイ映画に驚く

2位にあげた『バッド・ジーニアス』も素晴らしかったです。

f:id:kanhuni:20181226071518j:image

タイ映画は初めてでしたが、すんなり入っていけました。見てる間中、ずっと手に汗握りっぱなしでしたし。これはTBSラジオ「アフター6ジャンクション」経由で知った作品で、もっといろんな国の映画もフォローしたいなと思わされた映画でしたね。日本でもけっこうヒットしたみたいなので、これをきっかけに東南アジア映画もどんどん入ってきてほしい。『1987』を見るまでは今年の一位にしたいと考えていました。スタイリッシュで新しい感覚というか、見ていてとにかく新鮮で。それでいて、タイのリアルな現状みたいなのもひしひしと伝わってきて…これらが両立しているのが凄く良かったです。

 

hunihu2.hatenablog.com

 

スピルバーグは凄い(改めて)

あと、やっぱり凄いなぁと思ったのはスピルバーグ監督でした(当たり前のことを言っていますが、改めて)。

f:id:kanhuni:20181226071540j:image

新作の『レディ・プレイヤー1』と『ペンタゴン・ペーパーズ』がめっちゃ良かったのと、なんやかんやで初めて見た『キャッチミー・イフユーキャン』と『ジョーズ』が面白すぎてびっくりした。2018年に言うことではないような気もするけど、『ジョーズ』はまじで面白かった。

f:id:kanhuni:20181226082330j:image

ジョーズ』はまじでやばいよ…

毎年1〜2本、スピルバーグ監督作で見たことない作品を少しずつ見ているんですが、本当に全部面白くて、毎回クオリティの高さに改めて驚く。

監督で追いかけたのは、韓国のホン・サンス監督と日本の城定秀夫監督。まあまあの本数見たけど、お二方ともクオリティ高い作品を量産してて、なかなか追いつかない。やっぱり方法論を確立したような監督って強い。

飛行機で見た良作映画

あと気づいたのは、期待値上げずに見始めた映画は大抵面白く感じる。特に、飛行機の中で適当に見た『ライフ・オブ・ザ・パーティー』、『リングサイド・ストーリー』、『あの頃、君を追いかけた』が意外と面白かった。飛行機で見るにはちょうどいい映画ってありますよね。

f:id:kanhuni:20181226071529j:image

『ライフ〜』はメリッサ・マッカーシー主演のウェルメイドなコメディ映画です。離婚したてのメリッサ・マッカーシーが、大学に入学したばかりの娘と同じ大学に通い始めるというお話。実はメリッサ・マッカーシーできちゃった結婚しており、大学は3年生くらいで退学していたのだった。そんな彼女は果たして大学を卒業できるのか、しかも新しい恋の行方も…? みたいなストーリーです。近年流行りの、中高年の学び直し(リカレント教育)映画です。

一時期、アメリカのコメディ映画を集中して見てた時期がありましたが、最近はあんまりチェックしていませんでした。そんな時に久し振りに見て、展開の巧さと納得のラストに感心しました。アメリカのコメディ映画ってすごい。脚本がまとまってていいんですよね。どぎつい下ネタは散見されますが、それ以外は安心して見れます。ちなみに、メリッサ・マッカーシーは脚本にもクレジットされてます。

 Netflixで意外な掘り出し物

Netflixで適当に見つけた『ソウルへGO!』も泣かされた。原題はSeoul Searching。

f:id:kanhuni:20181226071901j:image

ポスターはあまりにそのまま『ブレックファスト・クラブ』なので、ややキワモノ感が出てしまっているのですが…。日本語タイトルもなんか適当ですし。『バブルへGO』かよ、みたいな。でも、このキワモノ感だけで見ないと判断するにはもったいない映画でした。

ちなみに、『ブレックファスト・クラブ』の感想は過去記事にあります。

 

hunihu2.hatenablog.com

 

 

『ソウルへGO!』の舞台は1986年の韓国。世界中から集められた、コリアンルーツの高校生たち。アメリカ、ドイツ、メキシコ…世界各地から集まった高校生たちは、韓国語や文化を学ぶために研修を受けることになる。しかし、遊び盛りかつ自由な国から来た高校生たちが、軍事政権下の韓国の抑圧的な教師の言うことを聞くわけもない。韓国にルーツを持つからと言って、韓国語を満足に話せるわけでもない。そんな中、参加者たちの間に恋が芽生え始めて…

…みたいなストーリーです。

正直言うと、「もうちょっと丁寧に作って欲しかった」というのが最初の感想だった。でも、キャラクターが愛らしいので、その魅力で引っ張る感じ。実際けっこう泣いてしまった。個人的には、すごく大切な作品になりました。

色んなアジア系の俳優が流暢な英語を使いながら、いろんな役柄を演じてたのはよかった。ハリウッド映画として『クレイジーリッチ!』が大ヒットしたのが今年のニュースだと思うけど、僕としては個人的にこの映画のインパクトが大きかったです。『クレイジーリッチ!』も面白かったですけどね。あまりの拝金主義に辟易するというか、「シンガポールは景気良いですねえ」という穿った見方にどうしてもなってしまった。主人公たちはその価値観から脱している、という設定ではありますが。

Netflixは、こういうインデペンデント映画を配信してくれるのがありがたい。余談ですが、「Netflixとかの動画配信サービスって古典映画とかほとんど無いからライト層向け」っていう意見には半分賛成だけど、やっぱりあと半分は留保したい。というのは、Netflixとかって、本作のような「本国では映画祭でひっそり上映、結果的に日本では劇場公開されていないしDVDにもなっていない作品」が大量にあるんですよね。そうすると、「誰も知らないようなマイナー映画」を自分で探して見ることができるということです。「自分でディグる」という要素が加わるんですよね。もちろん、Netflix上にある映画に限られるわけではありますが。それでも、見れる映画の範囲は果てしなく広がっています。

本作は、IMDb によると、製作費200万ドルで、興収は18万ドル。大規模な上映はされていないという感じです。サンダンス映画祭で上映されて評価はまあまあだったようですが。

それでも、『ソウルへGO!』はアジア系だけで作っていて必死な感じがしましたし、とても切実な思いが伝わってくる映画でした。どうしようもない安っぽさとかは随所にあるんですが、低予算ならではの可愛げということで許せます。「みんなで頑張って作った感」があります。

あと、クリスタル・ケイが出演しています。

「明らかに低予算映画、しかもストリーミングで適当に見つけた」という条件が相まって、ものすごくハードルを下げて見始められるのもいいです。加点方式で見れるというか。減点方式で「あそこは撮り方ダメ、脚本おかしい」とか考え過ぎると楽しくないですし。本作は109分あって、正直いらないシーンを削って、90分以内にしてほしいとかの要望はあるんですが。

f:id:kanhuni:20181226072959j:image

それでも、刮目すべき素晴らしいシーンが後半にあります。Rosalina Leeさんという方の演技が本当に素晴らしくて。悲しげな目がいいです。生き別れた母親に会うというシーンなのですが、「こんなに悲しいことが世の中にあるかよ」とか感じながら、やはり泣いてしまいました。

 

ビフォアシリーズ2作目、こちらの方が好きかも 

f:id:kanhuni:20181226080021j:image

気軽に見た『ビフォア・サンセット』は前作『ビフォア・サンライズ』に負けず劣らず傑作だった。ヨーロッパをもの凄く思い出させる描写が続くので、なんかとても懐かしい気持ちになった。ずっと会話劇なのに、どうしてこんなに面白いんだろう。

あと個人的な変化としては、Netflixとかで適当に見るようになったこと。一気見しないといけないとか思ってた時もあったけど、最近は30分ずつとか細切れに見るのも増えた。

今年はミニシアターに通える環境にいたけど、来年はどこにいるか分からないので心配している。結局見てる映画の3分の1くらいはミニシアター系だし。そもそも韓国映画はミニシアター公開ばかりだし。まあ、そうなるとますますストリーミングに頼ることになりそう。来年はどうなることやら。

いよいよ公開が迫るクリード2、だけど…

とりあえず2019年は『クリード2』が楽しみです。

f:id:kanhuni:20181226080051j:image

1月11日まで待ちきれん。「なんで年末公開にしてお正月映画にしないんだ!」とか腹たちます。このタイミングで『クリード1』をテレビ放映すればいいのに、もちろん『ロッキー4 炎の友情』もセットで。『ロッキー1』→『ロッキー4』→『ロッキー ザ・ファイナル』→『クリード1』の「4週連続ロッキー祭り」とかする必要あると思うのですが。「ハリポタ」とか「ファンタビ」はそういうことするじゃないですか。

というかもう、ロッキーシリーズって日本ではそういう受容のされ方していないのかな…。そう考えると悲しいですが。どう考えても、これが真実でしょうね…。まあ、絶対に公開日には見に行きますよ。

f:id:kanhuni:20181226080351j:image

邦題には「炎の宿敵」という副題が付けられてました。それにしても、『ロッキー4』の予告編てカッコいいんですよね。本当によく出来てると思う。本編よりよく出来てるとか言われるのも納得です。1分半くらいしかないので、予告編だけでもぜひ。

「ロッキー4」予告編 - YouTube

 

ドールズの雄姿に感銘を受ける 

それと、古典的なアメリカ映画とかきちんと見ないといけないなって何年も思ってるけど全然見れてない…。見る必要あるのかって話もあるんですが、映画評論とか読んでると、どうやら見ないといけないんですよね。こういうモチベーションになってるのは、新作以外2位にあげた『カリフォルニア・ドールズ』にもの凄く感銘を受けたのもあります。これはAmazon Videoのレンタルで観賞。やっぱり便利ですね。いよいよレンタルビデオ店に行かなくなりました。

f:id:kanhuni:20181226073331j:image

この辺りの映画も、肩肘張らずに適当に見ていけばいいとは思うんですが。ただ、Netflixとかには全くないんですよね。なので、来年はソフトを買って少しずつ見ていこうと思っています。

以上、感想が長くなりましたが、2018年の映画ベストでした。来年もたくさん面白い映画を見たい!