Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

国際市場で逢いましょう

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昨日、韓国映画『国際市場で逢いましょう』を観ました。韓国では超大ヒットしたようだけど、日本ではミニシアターで公開。前評判通り、めっちゃ泣いた。

映画館では韓国人のオバちゃんが何人かいて、釜山訛りに笑っていたり、映画に出てくる固有名詞(韓国の歌手の名前とか)にいちいち反応して騒いでいたのが微笑ましかった。まあ、若干うるさいとは思ったけど(笑)。でも、一緒に泣き笑いできて楽しかった。

あらすじ

韓国の現代史を家族の話と絡めながら描いていく映画で、韓国版『フォレスト・ガンプ』のようなもの。韓国の現代史って壮絶すぎて、言葉にならないほど悲劇に満ちている。
日本の植民地支配が終わったと思えば、すぐに朝鮮戦争が始まった。朝鮮戦争で主人公一家は散り散りになる。避難するための船に乗ろうとしたドクスは、妹を背中におぶっていた。が、何者かに引っ張られて、妹は冬の海に落ちてしまう。それを聞いた父親は、妹を探しに船を降りて探しに行く。やがて船は出発することになり… 一家は離散した。それは、幼い主人公ドクスの悲劇の始まりだった。

ドイツ、ベトナム
立派な青年に成長したドクスは、ドイツへガストアルバイターとして外貨を稼ぎに行く。炭鉱で死にかけの目に遭いながらも、生涯の伴侶に出会う。

ドイツの後は、ベトナム。韓国はアメリカの始めたベトナム戦争に深く関わっていったのだ。ドクスは後方の部隊として従軍するが、ここでもまた死にそうな目にあう。そして、東方神起のユノが助けてくれたりする(笑)

「離散家族」
そして一気に1980年代の韓国になり、その時代にはいわゆる「離散家族」再会の機運が高まっていた。「離散家族」は北と南に別れた家族を再会させようとしたものであったが、実際に韓国の公共放送が離散家族を探すための番組を始めると、韓国国内だけで多くの離散家族が再会することになった。(知識が断片的で、この辺は少し曖昧です。ご容赦。)
ドクスは、離れ離れになった父親と妹を探し始める。果たして、彼は再会することができるのだろうか。一家はもう一度集まることはあるのだろうか。

感想

この映画を観ながら涙が止まらなかった。歴史の重みと、主人公の人生の重みにただただ圧倒された。映画館で観ている人のすすり泣く声が聞こえてきたし、僕も「みんな泣いてるし」と思い人目を憚らずに泣いた。

寺脇研の指摘
ただ、ある映画評を読んで、現在では気になるところがある。映画館に貼ってあった『映画芸術』の記事で寺脇研(韓国映画通の評論家)が指摘していたのが、韓国の独裁政権時代→民主化を全く描いていないこと。映画は120分少しでコンパクトにまとめてあるのだが、少し短く感じたのはここのところ。韓国現代史でこの部分を描かないのは、政治的な配慮だろうか。それにしても、そう言われると少し不可解だな。例えば、主人公ドクスには弟がいて、その弟はソウル大学に通うインテリ。彼なんかが学生運動にコミットしていないはずがない、というのが寺脇研の指摘。納得。確かにそうだ。描いてもよさそうだし、何より全く描かれないのは不思議なのだ。

相棒
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右にいる、主人公の親友がたまらなく好きだった。普段はちゃらんぽらんで、エロくて、どうしようもなく頼りない。トラブルを持ちこんで、主人公を困らせる。でも、主人公がピンチに陥ると、自分の体を投げうって全力で助けてくれる。こういう相棒キャラクターは大好きだな。

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僕の大好きな映画『トラック野郎』シリーズにでてくる、主人公の相棒・ジョナサン(愛川欽也)みたいだった。顔も似てる 。こういうキャラクターはほんと大好きだわ。

なんやかんや言いましたが、映画を観ながら大いに泣いてしまいましたし、なにより多くの人に観て欲しい映画です。

追記
主人公ドクスの言う「自分の子どもたちの時代ではなくてよかった」というセリフは、すごく心に刺さった。あのような時代を生き抜いた者だけが言える、重みのある言葉だった。現代では幸せになったように見えるが、この映画はやはり悲劇だと思う。失ったものはもう取り返せないのだ。