Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

【メモ】ヨーロッパの中道路線

時事ウオッチ コロナ時代の中道に注目=近藤正基 https://mainichi.jp/articles/20200711/ddf/013/070/011000c毎日新聞 #ニュース

戦後ヨーロッパの文脈に照らせば、ファシズム共産主義のあいだに位置して自由民主主義を守ること、自由放任主義と計画経済のあいだに位置して市場経済福祉国家を推進することも、中道に含まれる。大陸ヨーロッパのキリスト教民主主義政党はこのような立場に立って、多様な社会層から支持を得て一大勢力を築き上げた。

日本では、立憲と国民の合流話がまた持ち上がっているが、このような「中道路線」を目指すのかな。

四方田犬彦の韓国映画論ー『ユリイカ』韓国映画特集

 

ファンブックとか解説本的かものかと思い気軽に読んでいた『ユリイカ』の韓国映画特集。

 四方田犬彦「韓国ニューウェイヴ二〇年」が目に留まる。韓国映画史の特徴として「反共映画」と「反日映画」をあげつつ、2000年以降のニューウェイヴにおいて韓国現代史における暗黒部分に対する告発映画の存在を指摘。

それ以後、韓国映画は南北分断の歴史的事実を反共イデオロギーから切り離し、遊戯的に処理する方向へと進んだ。(94ページ)

それと、最近の「反日映画」への鋭い指摘として

クッポン映画に共通しているのは、日本に対する事前調査の不在と歴史的な無知である。だが今回の原稿ではそれには触れないで、先に進むことにしておきたい。(95ページ)

この部分は、四方田犬彦らしいというか。「それには触れないで」とは言わず、きちんとまとめてほしい。独特の距離感(=「我らが他者なる韓国」)で韓国論を書いてきた人ならではの韓国映画史の本を(改めて)書いてほしい。

でも、論考の主題はそこにない。韓国ニューウェイヴが韓国現代史の事件に題材を求め、果敢に映画化していることを指摘している。『ペパーミント・キャンディ』、『1987、ある闘いの真実』、『タクシー運転手』が挙げられる。

韓国映画はこうして、つい先ほどに生じた現代史の悲惨なる醜聞を、みごとに商業映画の素材に仕立てるだけの力量を、アクチュアルに所持するにいたったのである。(97ページ)

そして、『マルモイ』を挙げてからの以下の指摘には大いに首肯した。

もし韓国映画に独自のキャラクターが存在しているとすれば、それはこうした庶民と知識人のコンビであろう。それを世俗化された儒教と呼ぶことを、わたしは躊躇わない。庶民が教化され、民族の矜持に目覚める。庶民が知識人を助け、自己犠牲も問わずに行動する。それが韓国映画の根底に横たわるエトスなのだ。(99ページ)

 

もちろん性急な単純化は慎まねばならないが、わたしは今後の韓国映画が向かうべき主題のひとつが、親日派金日成派への転向を遂げた人物を、いかに韓国人として描き切るかというものであると考えている。(同)

四方田犬彦はかなり早い段階から、韓国映画を日本に紹介し続けていて、四方田犬彦だからこそできる鋭い指摘かなと。賛否両論あるだろうけど。なかなかできない、重要な指摘にあふれた論考だった。これまでに書いたものもかなりあるだろうし、最新の動向を踏まえつつ「韓国映画論」として1冊にまとめてほしい。ユリイカの中に埋もれるには惜しいので。

 

 

われらが「他者」なる韓国 (平凡社ライブラリー)

われらが「他者」なる韓国 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

 

 

 

反自宅待機デモ、WHO、大戦略の終わり

www.theguardian.com

アメリカで自宅待機に反対するデモが起こっている。しかし、それらは2009年の「ティーパーティー運動」のように、保守系・右翼系団体からお金が出ているという話。さらに、トランプが支持するツイートをするもんだから、余計にタチが悪い。

www.foreignaffairs.com

アメリカの拠出金停止に限らず、WHOは世界で評判が悪くなってる。信頼回復のためには、国連事務総長の主導で、WHOの対応について検証しろという提言。独立し、科学的な調査が必要だと。確かに、そうでもしないと、信頼回復には至らないかも。トランプによるレトリックだけじゃなく、世界的に評判を落としてるので。

www.foreignaffairs.com

大戦略の終わり」という論考。直線的(Linear)な大戦略(Grand strategy)が機能する世界ではなくなったと。国際システム全体に権力が拡散し、無極性の世界(Nonpolar world)になっている。かつてのように軍事力や経済力だけが影響力を及ぼさないので、二極的(Bipolar)でも多極的(Mulitipolar)でもない。民兵からNGO、グローバルな企業、あるいは国際的な犯罪組織に至るまで、さまざまなアクターがいて、国家と競争している。伝統的なパワーは影響力を失い、世界秩序や協力は難しくなっている。国際関係は乱雑な、アドホックな取り決めによって構成される。

アメリカの戦略で言うと、封じ込め政策はトルーマンからレーガンまで引き継がれ、リベラルな国際秩序(Liberal Internationalism)はクリントン、ブッシュ、オバマが(バリエーションはあれど)推進してきた。そのようなコンセンサスはもう存在しない。

多文化主義(Multiculturalism)の影響、「想像の共同体」の崩壊、政治的分極化(Political polarization)・・・。もはや単一のナショナルアイデンティティーは信奉されなくなった。

さらに、専門家やメディアポなどエリートへの懐疑、そしてポピュリズムの横行で国内は分断された。首尾一貫(Coherent and consistent)した大戦略を実行するのはますます難しくなった。

Moving forward without grand strategy requires embracing two principles: decentralization and incrementalism.

大戦略なしで進んで行くには、2つの原則が必要だ:脱中心化(分権化?)と漸進主義である。」

アメリカの戦略家は次のジョージ・ケナン(対ソ封じ込め戦略の立役者)を目指すべきではない、と締められている。

 

あと、 浅田彰の論考は相変わらずめちゃくちゃ面白い→

realkyoto.jp

いずれにせよ、「この程度の犠牲ですむなら経済を減速させたくない」というのが政治家たちのホンネで、むろん安倍政権も同じ(緊急事態宣言を出しながら、広範な休業要請をためらい、休業補償にも否定的)、ただ英米ほどはっきり腹をくくる悪賢ささえなく、状況を見て豹変する運動神経もない…。