IMRAD型ではない、人文系の論文の型について考えてみます。歴史的な研究や事例研究を想定しています。概ね、次のような内容になるのではないでしょうか。
当たり前といえば当たり前の構成なのですが、改めて書くとこうなりますね。もちろん、日本語で「序論→本論→結論」と言い換えてもよいです。
では、それぞれの内容を具体的に、箇条書きですがみていきましょう。チェックすべきポイントも提示しています。
Abstract 要旨
① Introduction(序論)のまとめ
② Body(本論)のまとめ
③ Conclusion(結論)のまとめ
5つのチェックポイント
- 背景
- 目的
- 問い
- 研究の進め方+論拠
- 結果の要約=結論
Introduction
序論=問いの提示、先行研究、方法
① 研究課題の背景、基本情報、重要性を示す。② 重要な先行研究の引用:過去の研究を紹介=研究史の提示
*先行研究整理3つのパターン
(1)累積前進型:時系列で重要な研究を取り上げ、最新の研究水準を示す
(2)対立抗争型:意見の対立とその理由を示す
(3)論点整理型:先行研究の交通整理
③ 先行研究から導き出される新たな課題の示唆:まだわかってないことを提示。具体的な課題(ニッチ)を示す。これまでの研究の貢献を述べた上で、まだ検証されていない課題=リサーチクエスチョンを提示する。
④ その課題をどのように克服するかを示す。研究の方法を述べる。
⑤ 先行研究を活用し、論文で扱う概念・理論を説明・定義する。
⑥ 研究の設計図を示す。研究の目的と内容を簡単に紹介する。研究目的を提示し、さらに一番重要なメッセージを短く提示する。研究史上の意義を示す。
4つのチェックポイント
- 研究の分野を特定
- 研究の重要性を提示
- 分野や用語の定義
- 問題の指摘
Body 本論=主張と論証
3~5章に分けて論じる。Discussion(議論)を含む。
2つのパターン
(1)時系列型:時系列に沿って述べる。
(2)分析対象型:分析対象を分け、それぞれの対象ごとに述べる。
*主張を裏付けるための事実的・理論的な根拠を提示
5つのチェックポイント
- 先行研究は把握されているか
- 論拠、データは十分か
- 調査方法、データの質・量、分析方法は適切か
- データは論旨にとって関連性のあるものか
- 議論は妥当か=論拠から結論がきちんと帰結するか
Conclusion 結論=主張の再確認
①問題点と新発見の再確認:この研究が何を目的にして、何を発見したかを、改めてはっきり示す
②結果の考察:この研究で何が明らかになったかを述べる
③過去の研究との違い:これまでの研究との関連や違い、およびその意義
④今回の研究の適用範囲・限界:今回の研究の限界や問題点を記す それを今後解決するために次に必要な研究を示唆する
⑤主要な主張:読者に伝えて覚えておいてほしいことを短く明確に記述する
査読のポイント
- 研究は該当分野にどのような貢献をしたのか
- 研究課題をいかに解決したのか
- 研究の成果からどのような理論的な示唆を得られたのか
- 今後の研究課題はどのようなもの
6つのチェックポイント
- 検証内容の確認
- 先行研究の課題
- 補完と結果の強調
- 理論的貢献
- 限界の明示
- 今後の研究課題
感想
だいたいこのような感じになるのではないでしょうか。参考文献をかなり参考にしました。小熊(2022)では「ハンバーガーエッセイ」と呼ばれている型ですね。論文そのものについては戸田山(2022)、人文系全般の論文の書き方については小熊(2022)、歴史研究については村上(2019)をオススメします。また、英語のライティングの本を読むのも勉強になります。私は英語で論文を書くので、特にこれらの本は参考にしています。
参考文献
小熊英二(2022)『基礎からわかる論文の書き方』講談社現代新書
戸田山和久(2022)『最新版 論文の教室』NHK出版
中谷安男(2020)『経済学・経営学のための英語論文の書き方』中央経済社
中山裕木子(2018)『英語論文ライティング教本』講談社
野口ジュディーほか(2015)『Judy先生の英語科学論文の書き方』講談社