Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

コロナ禍による経済危機をいかに避けるか=FA記事から

最近、有料登録をして読んでいる、フォーリンアフェアーズの記事。

www.foreignaffairs.com

How to Avoid a Coronavirus Depression

It Will Take Wartime Spirit—and Spending—to Keep the Global Economy Afloat

コロナ蔓延による経済危機をいかに避けるか。グローバル経済を浮上させるには、戦時の精神と支出が必要だと。

以下に、抄訳というか、内容のまとめを。

要約

・経済悪化の規模が、2008-2009年のリーマンショックからの経済危機と同等か、1929-1933年の世界恐慌のレベルに近づいている。

コロナウイルス不況(coronavirus recession)は、消費財とサービスに対する需要の深刻な減少によって起こっている。

・Social distancing(感染しないように距離を取ること)による経済へのショック

・特に、家計需要の急激な落ち込み。例えば、何億もの人がロックダウンの状態に置かれた中国では、1月2月に、前年に比べて小売り売上高が20.5%減少した。

・2019年のアメリカのGDPは21.43兆ドル。そのうち、家計の消費は14.56兆ドルで、68%を占める。

・コロナ危機が家計の消費に与える影響は、米国市場最悪の四半期と同等のGDP収縮を引き起こす可能性がある。

・米国政府は対策を取るべき。医療制度をサポートするため、あらゆる手を使う。Social distancingを必要とする期間を短くする。

アメリカ政府がすべきこと

①投資:検査キット、病院のベッド、人工呼吸器、ワクチン開発。

②あらゆるセクター(公的機関、私的機関、国と州政府)をまとめて、力を結集させる

③the Defense Production Act(国防生産法)に基づく権限を使って、独占禁止法の検討を緩和し、企業が協働し、医療機器やワクチンを迅速かつ大量に生産できるようにする。

・これらの努力は、第二次大戦中に枢軸国を倒すために、資材の生産を増やすためにやった政策と似ている。

・コロナを封じ込め、Social distancingが必要なくなれば、すぐにビジネスへの支援をするべき。レストラン、バー、スポーツチーム、航空会社などなど。

・企業に対して補償をするべきだが、問題はコスト。

・例えば、感染の急激な蔓延を抑えるのに半年くらいかかるとすると、消費需要への影響は1兆ドルから2兆ドルになる。これを政府が企業に払わないといけない。

・1941年の財政赤字は3%から、1943年には27.5%に拡大。GDPに対する債務残高は、1941年の44.5%から、1946年は119.1%に。その後の数十年で、財政黒字とか、経済成長に比べて小さい財政赤字によって、これらの数字は下がった。こうして、アメリカは第二次世界大戦のコストを、未来の世代と分かち合ったのだ。コロナとの戦いでも、同じことをするべきだ。

・米国政府は財政政策に積極的に取り組むべき。

・経済への影響は日に日に増していくので、いますぐに取り組むべき

 

感想

今の経済危機に対処するには、「戦時体制」が必要だという論考。財政赤字・財政規律を気にしすぎず、財政政策をがんがんやるべき。ウイルス対策への投資はもちろんだし、自宅待機要請などで出た損失への補償などを大量にやらないといけないと。まっとうな提言ですね。というか、海外の論説ではこのような方向性でけっこう一致しているように思う。参考にしたい。

 英語の勉強のために記事を読んでいるけど、いまはコロナの話題一色なのでそればかりになってしまった。経済の記事は普段あまり読まないので、単語とかがけっこう難しい。あんまり自信ない部分もあり、後半にあった財政政策の具体的なところはけっこう省いてしまった。ざっくり、財政政策をがんがんしろ、としか言ってない気もするので大丈夫かなと。

 

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コロナウイルスは世界秩序を作り変えるかも【FA記事から】

www.foreignaffairs.com

フォーリンアフェアーズ(FA)の記事から。FAの電子版の記事は、専門家が時事的な話を大局的な観点から分析してくれるので、毎度ながら勉強になる。

コロナ危機を利用して、中国政府がグローバルなリーダーシップを発揮しようとしているという話。アメリカが国内問題に追われ、さらに国際的な指導力を発揮するそぶりも見せない。その中、中国が国内での危機を脱したと宣伝し、他国へ援助しまくっていると。中国は初動対応のミスが非難されているが、グローバルパワーとしての影響力を高めている。他国への物質的な援助の規模などを見ると、これはなかなか批判しにくい動きのように思える。

以下で、記事の中から英文をちょっと取りだして、訳を加えました。

 

タイトルは以下の通り。

The Coronavirus Could Reshape Global Order(コロナウイルスは世界秩序を作り変えるかもしれない)
China Is Maneuvering for International Leadership as the United States Falters「アメリカがもたつく間に、中国が国際的な主導権を得ようと画策している」


1.1956年のスエズ戦争第二次中東戦争)の時、イギリスは判断を誤り、グローバルパワーとしの地位を失った。アメリカが判断を誤れば、コロナ危機はイギリスにとって「スエズモーメント」になるかもしれない。
2.ワシントン(アメリカ)が初動対応を誤ったのは明らか。トランプの発言は混乱を招き、不安を広げた。パンデミックはトランプの独善性を増幅させたし、ワシントンが国際的な対策をリードする準備ができていないことを露呈させた。

 

The status of the United States as a global leader over the past seven decades has been built not just on wealth and power but also, and just as important, on the legitimacy that flows from the United States’ domestic governance, provision of global public goods, and ability and willingness to muster and coordinate a global response to crises. The coronavirus pandemic is testing all three elements of U.S. leadership. So far, Washington is failing the test.

「70年以上にわたるグローバルリーダーとしてのアメリカの地位には、3つの要素の上に立ってきた。富と権力だけではない。より重要なのは、アメリカの国内統治から生まれる正統性(legitimacy)、グローバル公共財(global public goods)の提供、そして、危機に対する国際的な対応を促進し、調整する能力と意思であった。コロナ流行はアメリカのリーダーシップの3要素全てをテストしている。今のところ、ワシントンはこのテストに落第している。」

As Washington falters, Beijing is moving quickly and adeptly to take advantage of the opening created by U.S. mistakes, filling the vacuum to position itself as the global leader in pandemic response.

「ワシントンがたじろぐ間に、北京はアメリカの失敗によって生まれた「空白」を埋め、パンデミックに対処するグローバルリーダーとしての地位を確立するため、迅速かつ適切に動いている。」
「中国が初動対応で誤ったのがそもそもの発端だが・・・」ともちろん留保を付けた上で、以下のように指摘する。

Yet Beijing understands that if it is seen as leading, and Washington is seen as unable or unwilling to do so, this perception could fundamentally alter the United States’ position in global politics and the contest for leadership in the twenty-first century.

「北京がうまく対処して引っぱり、アメリカはその能力も意思もないと見なされれば、その認識はアメリカの国際政治における地位を根本的に変え、21世紀の覇権争いを変えると、北京は理解している。」

As the crisis worsened through January and February, some observers speculated that the coronavirus might even undermine the leadership of the Chinese Communist Party. It was called China’s “Chernobyl”

「1月と2月にコロナ危機が中国で悪化する中で、コロナ危機は「中国共産党にとってのチェルノブイリ」とも言われた。」

Yet by early March, China was claiming victory. Mass quarantines, a halt to travel, and a complete shutdown of most daily life nationwide were credited with having stemmed the tide

「しかし、3月初めまでに、中国は勝利宣言をする。コロナ流行を食い止めたのは大規模な検疫、旅行停止、日常生活の全国的な封鎖のおかげだと。」

Beijing is working to turn early signs of success into a larger narrative to broadcast to the rest of the world.

「北京は、成功の兆候をより大きな「物語(narrative)に変えて、世界中に宣伝している。」

A critical part of this narrative is Beijing’s supposed success in battling the virus.

「この物語の重要なのは、北京がウイルスに打ち勝つのに成功したということだ。」

Foreign Ministry spokesman Zhao Lijian. China, he added, set “a new standard for the global efforts against the epidemic.”

「中国外務省の趙立堅(ジャオリージエン)副報道局長は「中国は感染症へのグローバルな対策の新しいスタンダードを作った」と語った。
コロナは米軍がもたらしたものだ、という根拠薄弱な主張も続けている。

Xi understands that providing global goods can burnish a rising power’s leadership credentials. He has spent the last several years pushing China’s foreign policy apparatus to think harder about leading reforms to “global governance,” and the coronavirus offers an opportunity to put that theory into action.

習近平は、中国のリーダーシップの信用性(権威、資格)を磨くと理解している。ここ数年、中国の外交政策機関に「グローバルガバナンス」の改革を主導することについての調査を推進してきた。そして、コロナウイルスはその理論を実行に移す機会を与えた。」

When no European state answered Italy’s urgent appeal for medical equipment and protective gear, China publicly committed to sending 1,000 ventilators, two million masks, 100,000 respirators, 20,000 protective suits, and 50,000 test kits.

「ヨーロッパの国がイタリアの緊急の要請(医療機器、防護装備)に応じられなかったとき、中国はイタリアに対して、1,000の人工呼吸器、200万のマスク、100,000の呼吸器、20,000の防護服、50,000のテストキットを送ることを公約した。」

Beijing’s edge in material assistance is enhanced by the simple fact that much of what the world depends on to fight the coronavirus is made in China.

「北京は単純な事実によって、物資の支援で優位に立っている。つまり、コロナウイルスと戦うために世界が依存するほとんどの物が、中国で作られているのだ。」

The United States, by contrast, lacks the supply and capacity to meet many of its own demands, let alone to provide aid in crisis zones elsewhere.

「一方、アメリカはグローバルな危機への援助を提供することはおろか、自国の需要を満たすための供給と能力すら欠いている。」

During the 2014–15 Ebola crisis, the United States assembled and led a coalition of dozens of countries to counter the spread of the disease. The Trump administration has so far shunned a similar leadership effort to respond to the coronavirus. Even coordination with allies has been lacking. Washington appears, for example, not to have given its European allies any prior notice before instituting a ban on travel from Europe.

アメリカは2014年~2015年のエボラ危機の時のように他国を集めて対応を協議したりしていない。同盟国との協調すら欠いている。なにしろ、ヨーロッパの同盟国からの渡航禁止の前に、事前通知すら行っていないありさまだ。」

China’s chief asset in its pursuit of global leadership—in the face of the coronavirus and more broadly—is the perceived inadequacy and inward focus of U.S. policy.

「中国がグローバルなリーダーシップを追求する上での利点は、アメリカの政策の不十分さと内向きの意識だ。」

Yet even as it focuses on efforts at home, Washington cannot simply ignore the need for a coordinated global response. Only strong leadership can solve global coordination problems related to travel restrictions, information sharing, and the flow of critical goods. The United States has successfully provided such leadership for decades, and it must do so again.

「ワシントンは国際的な対応の必要性を無視できない。強い指導力だけが、旅行制限や、情報共有、重要な物資の流動性など、国際的協調が必要な問題を解決できる。アメリカは、数十年にもわたって、そのようなリーダーシップを発揮してきた。いまこそ、もう一度発揮するべきだ。」

That leadership will also require effectively cooperating with China, rather than getting consumed by a war of narratives about who responded better. Little is gained by repeatedly emphasizing the origins of the coronavirus—which are already widely known despite China’s propaganda—or engaging in petty tit-for-tat rhetorical exchanges with Beijing.

「そのリーダーシップは、中国とうまく協力することも必要とするだろう。どちらがうまく対処したのか、プロパガンダ合戦(war of narratives)にしても仕方ない。コロナが中国起源だといくら強調しても、なにも得られない。北京と「売り言葉に買い言葉」の口げんかをしても意味が無い。」

Ultimately, the coronavirus might even serve as a wake-up call, spurring progress on other global challenges requiring U.S.-Chinese cooperation, such as climate change. Such a step should not be seen—and would not be seen by the rest of the world—as a concession to Chinese power. Rather, it would go some way toward restoring faith in the future of U.S. leadership.

「最終的には、コロナウイルスは、気候変動などの米中協調を必要とする問題への対処を促進するかもしれない。中国の力(チャイナパワー)への譲歩であってはならない。むしろ、米国のリーダーシップへの信頼を回復する形で進められるべきだ。」

 

 

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立花隆の自伝と読書術

 

立花隆の自伝的な本。これまでの歩みを振り返ってるが、なかなか圧倒される。田中角栄研究に始まり、共産党研究、ロッキード裁判…その合間、と言っても、合間の仕事ではない充実度でサイエンスの本を次々に書いていく。半端ない仕事量。

取材前には資料や著書をありったけ読み込んで行くとか、普通はなかなかできないこと。

角栄再評価の流れは冗談じゃない、という。論駁され尽くした議論が、ゾンビのように復活してくるのに呆れると。昔は渡部昇一で、近年だと石原慎太郎田原総一朗も最近似たような本出してたな。この本にも簡単にではあるが、再反論が載せられていて、どう考えても立花隆の批判が正しいと思う。

立花隆の凄まじさに触れる本。あと、これまでの膨大な著作集からオススメや読み方も教えてくれるのでお得。角栄研究とかはあんまり読む気が起こらないが…『アメリカジャーナリズム報告』をちょっと読み直そうと思った。

 

けっこう上の本にかぶる部分は多い。文藝春秋を退職する際に書いた文章がめっぽう面白い。社報に載ったというから驚き。その後も関係を継続するのだから、文藝春秋社はなかなかおおらかな社風だな。

大学までは文学青年だったが、就職してからノンフィクションの面白さに気づいたという。その後はほとんど文学を読まなくなったが、大江健三郎だけは読んでいる様子が伺える。ネコビルの3階に棚があるらしい。

すべて読んでから書くかという問いに、書きながら資料を読んでいく、同時並行だと答えている。また、キーフレーズや印象的な文章なども、書きながら思いつくと。ひたすら調べて読んで、それを研究者とかにぶつけて、さらにそれをまとめて…と、とにかく真面目な方法が紹介されている。なかなか真似できるものではないが。プロの書き手ってこうなのかと思い知らされる。真面目にやるしかないのだなと。

影響を受けたノンフィクションの名前がちらほらある。「ブックガイド」の類は一切信用しないというが、「おすすめノンフィクション」などでググっても本当にロクなものが出てこないから、立花隆が10冊でも100冊でもいいからまとめてほしい。国内外のノンフィクションをバランス良く読んでいきたいので。たまに、ノンフィクション本の帯などでも見るし、これまでに膨大な数の書評も書いてきてるだろうし。誰かまとめてほしい。

立花隆は、本当に博覧強記という言葉がピッタリだと思う。本を読んでいるとめちゃくちゃ勉強になるし、何より知的好奇心がくすぐられる。大学を卒業すると、そういう機会もあまりなくて。久しぶりに、あれも読みたい、勉強したいという意欲が出てきた。やる気スイッチ押された。

あと、Kindleよりも紙のほうがやはりパラパラ読めるな。電子書籍は内容が頭に入ってこないのではないか、と敬遠する人いるけど、逆だと思う。頭に入ってきすぎるのだ。電子書籍では、適度に流し読みというのが難しい。ザーッと、ページをめくるというのができない。意外にもしっかり読み込めてしまう、というのが電子書籍の難点だと思う。キーワード検索やハイライト機能などを活用すればいいのだとは思うけど。それだとあんまり味気ないし。やっぱり本って、圧倒的に読みやすい。

 

 

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