Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

立花隆のジャーナリズム論


asahi.com :徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」 - 朝日新聞社シンポジウム

それで、そういうところで働く人たちは、基本的にどういう能力を持たなきゃいけないか、それを分けてみると、大体次ようになります。つまり、これが先ほどの「報道パワーの源泉」の内容とほぼ対応するんですが、もうちょっと違う表現で言うと、こういうものがジャーナリストの能力として必要なわけです。

 基本は、(1)取材力(対人関係形成力/信頼される人格)、(2)筆力(文章力より説得力/ナルホド/その通り)、(3)眼力(広く、深く、遠くをみる力/裏側を読む力)、(4)バランス感覚、というふうに分かれると思います。その取材力という時に、何よりも大切なのは、その取材対象の人間と対人関係をうまく形成できる能力、その取材相手から信頼される能力、そういう能力ですね。

 2番目の筆力というのは、一般的に名文を書く能力ではないんです。そうじゃなくて、むしろ説得力がある文章を書く能力で、読む人になるほどと思わせたり、そのとおりだと思わせる、そういう説得力があるものを書く力です。

 そういうものを書く前提として、3番目のこの眼力というのが必要でして、これは「広く、深く、遠くを見る力」とありますが、これはこの目の前の現象を見た時に、それをもうちょっと広い視野でとらえて、表面だけじゃなくて、もっと深いところをとらえて、さらに時間軸でもっと遠いところ、後ろのほうにも遠いところ、それから、前のほうにも遠いところを見る。そういうふうにものを見る眼力、プラス、この「裏側を読む力」が必要で、何かが表面に現れる場合、その裏側というものが必ずあるわけです。その裏側を読む力、これは「広く、深く、遠く」とは全く違う別の次元ですね。物理の用語で言えば位相的な違いで、その背景を見るという、そういう力が必要なわけです。

 こういう三つの力を兼ね備えて、さらに4番目のバランス感覚がある人が、初めてちゃんとしたジャーナリストになり得るわけです。