Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

長谷川町蔵『21世紀アメリカの喜劇人』

21世紀アメリカの喜劇人 (SPACE SHOWER BOOks)

 

2013年3月に出た本だが、最近改めて購入した。予想以上に素晴らしい本だった。

 

著者は、ティーン・コメディを論じた章でこう書いている。


「一見、他愛のないティーン・コメディは、決して短くない歴史を経て現在に至ったものだ。そして先人が築いたものが次の世代にバトン・タッチされていく。すべては今まさに十代の日々を送る観客のために。」(154ページ) 

―本書を貫く精神である。

 

表紙になっているアダム・サンドラ―や、SNL(サタデーナイトライブ)ジョン・ヒューズジャド・アパトー等をキーワードに、映画史が軽快に描かれていく。それはなにかと軽んじられるアメリカのコメディ映画を、歴史のなかに位置付ける試みだ。日本でよくあるような「おバカコメディ」のような紹介はしないし、筆者はあくまでコメディ映画の担い手たちの”作家性”を明らかにしようとする。

本書で紹介されていた映画(『ブレックファスト・クラブ』、『恋は負けない』、『バッド・チューニング』、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』)は過去記事でも扱ったことがある。もちろんその他多くの映画が紹介されている。紹介ページが一覧となっていて読みやすく、手軽なガイドブックとしても有用だ。

 

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しかし、これらの映画を真剣に語るのは少しはばかられるのも事実だ。映画のタイトルが邪魔するのか、いくら真剣に話そうとも取り合ってもらえない。また、それ以前にこのような映画群が、日本でほとんど観られていないとうのも大きい。タイトルはバカそうに見えるけれど、それだけではないのだがあまり理解されていない。ハイブロウでセンスの高い映画も多いし、イメージされているようなバカなだけではないのだ(ただ笑わせてくれる映画も大好きだが)。

それらを含めて、豊饒な文化がアメリカのコメディ映画にはあるのだ。おそらく著者は、その辺の事情も踏まえて「喜劇」という言葉を使ったのではなかろうか(小林信彦『世界の喜劇人』にオマージュをささげたとは書いているが)。

著者の長谷川町蔵氏は、言葉を尽くしてこれらの映画の素晴らしさを語る。なにより学んだのは、「自分の感性で映画を観ること」だ。本書で紹介されている映画はラズベリー賞にノミネートされているものもあり、本国アメリカでも評価されていない映画も数多くある。しかし、「実際に自分で観ておもしろかった」事実こそが重要なのだ。

彼の一貫した姿勢には感銘を受けたし、紹介される映画を見るにつけ「ぼくの仲間だ!」(p.257,あとがきより)と思った。

 

そしていつか、彼と映画館で、コメディ映画を一緒に見たい。

 

21世紀アメリカの喜劇人 (SPACE SHOWER BOOks)

21世紀アメリカの喜劇人 (SPACE SHOWER BOOks)