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映画の感想と勉強日記

立花隆のジャーナリズム論


asahi.com :徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」 - 朝日新聞社シンポジウム

それで、そういうところで働く人たちは、基本的にどういう能力を持たなきゃいけないか、それを分けてみると、大体次ようになります。つまり、これが先ほどの「報道パワーの源泉」の内容とほぼ対応するんですが、もうちょっと違う表現で言うと、こういうものがジャーナリストの能力として必要なわけです。

 基本は、(1)取材力(対人関係形成力/信頼される人格)、(2)筆力(文章力より説得力/ナルホド/その通り)、(3)眼力(広く、深く、遠くをみる力/裏側を読む力)、(4)バランス感覚、というふうに分かれると思います。その取材力という時に、何よりも大切なのは、その取材対象の人間と対人関係をうまく形成できる能力、その取材相手から信頼される能力、そういう能力ですね。

 2番目の筆力というのは、一般的に名文を書く能力ではないんです。そうじゃなくて、むしろ説得力がある文章を書く能力で、読む人になるほどと思わせたり、そのとおりだと思わせる、そういう説得力があるものを書く力です。

 そういうものを書く前提として、3番目のこの眼力というのが必要でして、これは「広く、深く、遠くを見る力」とありますが、これはこの目の前の現象を見た時に、それをもうちょっと広い視野でとらえて、表面だけじゃなくて、もっと深いところをとらえて、さらに時間軸でもっと遠いところ、後ろのほうにも遠いところ、それから、前のほうにも遠いところを見る。そういうふうにものを見る眼力、プラス、この「裏側を読む力」が必要で、何かが表面に現れる場合、その裏側というものが必ずあるわけです。その裏側を読む力、これは「広く、深く、遠く」とは全く違う別の次元ですね。物理の用語で言えば位相的な違いで、その背景を見るという、そういう力が必要なわけです。

 こういう三つの力を兼ね備えて、さらに4番目のバランス感覚がある人が、初めてちゃんとしたジャーナリストになり得るわけです。

コロナウイルスはポピュリズムの限界をあぶりだす【英文記事から】

www.theatlantic.com

コロナウイルスポピュリズムの限界をあぶりだす」というアトランティックの記事。権威主義的な政治、ポピュリズムが横行する現代の国際政治の中で、コロナウイルス危機はその限界を露わにしたと。参考になる良い記事なので、以下に大事だと思った5箇所の引用と簡単な訳を。久しぶりに英語のお勉強も兼ねて。

訳は言葉補ったり、けっこう意訳しています。固有名詞に置き換えたりもしてます。たぶん間違えてはいないと思いますが、あくまで参考程度に。

 

1.ポピュリズムではコロナウイルスに立ち向かえない

ここ10年くらいの世界で横行してきたこと

・(中国とかロシアみたいな)権威主義

・(トランプとかの)国家主義、(移民反対とかの)排外主義

・(トランプみたいな、自分の国だけよければいいという)単独行動主義

・(トランプみたいな、専門家への敵意むきだしの)反エリート主義

・(「専門家の言ってることは実は怪しい、素人の俺たちのほうが正しい」っていう)反専門家の態度

現在の政治・地政学的な状況は危機(コロナウイルス流行)を安定させるのでなく、より悪化させている。

Over the past decade, the world has grown more authoritarian, nationalistic, xenophobic, unilateralist, anti-establishment, and anti-expertise. The current state of politics and geopolitics has exacerbated, not stabilized, the crisis.

 

2.アメリカは役割果たせ

トランプ政権は、(コロナを抑え込むための)国際的な対策をリードすることに、興味をまったく示していない。むしろ、リスクを強調しない姿勢を示してきた。

しかし、現在の局面では、アメリカは強い外交的措置をとるべき(リーダーシップを発揮するべき)。

トランプ政権は、コロナウイルス流行がすでにグローバルな危機だと認識しないといけない。コロナ流行は経済と安全保障に重要な影響があるし、人々の生命と安全にも影響が大きいから(トランプがいつも重視しているものじゃないか、というツッコミ)。

国の保健機構も働いてはいるけど(それでは不十分なので)、アメリカは世界のリーダーを集めて、グローバルな対応を話し合うべきだ。会談でも、会議でも何でもいいので。

The Trump administration has shown no interest in leading an international response, preferring instead to deemphasize the risk. However, this moment demands strong diplomatic action from the United States. The government needs to recognize that this is already a global crisis with economic and security implications, as well as risks to health and human safety. National health organizations are working closely together, but the United States should be convening world leaders, whether in person or by conference, and coming up with a global response.

3.国際的に話し合え

世界のリーダーたちは、コロナウイルスの世界的な蔓延(一国の中だけじゃなく)をどうすれば食い止められるかについて、すぐにでも話し合って、対策案について合意するべきだ。

 世界のリーダーは、旅行・入国制限の限界を分かった方がいい。制限しすぎると、経済的な影響がものすごいし。ワクチンを頑張って見つけて、貧しい国にも広く配るように確保しないと。

World leaders and their ablest advisers should be discussing and agreeing on best practices for containing the spread of the virus worldwide, not only within their own borders. This includes understanding the limits of travel bans, which can have an outsize economic impact if overused, and undertaking a massive effort to find a vaccine and ensure it is distributed widely, not just to the wealthiest few.

4.敵でも、弱い国なら助けよう

強い国は弱い国を助けないといけない。

その国が、例え敵であっても、弱い国は危機を乗り越えるキャパが少ないから。

アメリカとかは、一時的にイランとか北朝鮮への制裁をやめることも検討したほうがいい。危機が去ったら、もう一度制裁すればいいんだし。

Stronger states must provide assistance to countries with weaker capacity to deal with the exigencies of the crisis, even if the countries are adversaries. Toward that end, the U.S. and others can look at temporarily lifting certain sanctions on vulnerable countries, such as Iran and North Korea, where necessary to fight the virus. There will be ample opportunity to reimpose the restrictions when the emergency has passed.

5.「国際的に協力し合うシステム」をもう一度作り直そう

コロナウイルス危機(COVID19)は、「ポスト冷戦(冷戦終結以後)」で3番目の危機になっている。

1番目は2001年の「9.11」で、2番目は2008年の「リーマンショック」。

今回の危機は、先の2つの危機より、もっと大きな損害をもたらすかもしれない。さらに、「ガバナンス(統治)」の方法としての「ポピュリズム」の限界も表している。

専門家だいじ。

「Instituion=(国際、国内の)機関(組織、制度)」も大事。

グローバルなコミュニティーも、いわずもがな大事(国境を越える危機には、世界の国みんなで対処しないといけないから)。

専門家の啓発・啓蒙はあんまり人気ないけど(上から目線だし?)、やっぱり大事でした。

「(これら諸々の、今壊れかけてる)システム」がもう一度ちゃんと働くように、作り替えられないといけない。

COVID-19 is becoming the third major crisis of the post–Cold War period, following the terrorist attacks of September 11, 2001, and the financial collapse of 2008. This crisis may exact a greater toll than the other two and has demonstrated the limits of populism as a method of government. Expertise matters. Institutions matter. There is such a thing as the global community. An enlightened response, even if it’s unpopular, matters. The system must be made to work again.

【感想】

後ろにいくにつれて、だんだんと意訳がひどくなってしまいましたが、あんまり外していないんじゃないかと思います。

初めの医師の告発を無視して蔓延させちゃった中国の権威主義的な政治体制、トランプは専門家を軽視して国際的なリーダーシップを発揮しない体たらく。

ポピュリズム」の時代に、軽視されまくってきた専門家の役割、国際的な協力はやっぱり大事。入国制限で「壁を作ろう」にも、ウイルスはどんどん入ってきてるから、専門家の意見を取り入れた理性的な政策を実行すべし。入国制したらいいもんではない。国際的に、他の国と協力した政策こそが求められている。

国連でも、EUでも、WHOでも、何でもいいけど。国境を越えた国際的な機関(組織)は「結局何も決められない」とかよく批判されているし、各国では「主権を取り戻す」というお題目のもとで最近は超不人気。

でも、コロナ危機みたいな、グローバルな、国境をどんどん超えてくるウイルス対策には、やっぱり各国が手を取り合わないといけない。「ポピュリズム」、権威主義体制では太刀打ちできない。限界を示している。

実にまっとうな指摘だなーと思いました。

あと、「イランとか北朝鮮への制裁を一時的に見直して、助けた方がいい」というのも重要だと思った。「今回の危機が、のちの緊張緩和につながった」とかもあるかもしれないし。「大変なときはお互い様、人命が大事、人権が大事」とか、少し前までは(今も?)世界で当たり前だった価値観を、改めて見直すことになるし。

Brexitへの重要な指摘

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3321
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3321

離脱派にとってのBrexitは、「主権を取り戻す」行為だった。しかし、主権を観念的・象徴的なものとしてではなく、英国の国家としての影響力という観点でとらえれば、EUからの離脱は大きなマイナスである。

経済面に関して、離脱派の一部からは、「EUの足かせから自由になり、世界に羽ばたく英国」という離脱後の展望が聞かれる。ジョンソンも「離脱の果実」という表現を使う。しかし、離脱によってマクロ経済にプラスの影響がもたらされるとする経済分析は皆無に等しい。

英国にとってのEUからの離脱は、世界の荒波に一人で漕ぎ出すようなものである。「主権を取り戻す」との離脱派の掛け声とは裏腹に、達成されたのは「孤独」だったという批判は根強い。国際問題に関するEU内での協調もこれまでのようにはいかない。EU・英国間にいかなる協力枠組みが構築されたとしても、EUにおける議論を英国が自らリードするようなことは、もはやできない。

達成されたのは孤独だった、か。そうなりそう。グローバルブリテンとか掛け声はあるけれども。日本では「日英同盟の復活」とか言って、やや歓迎する向きもあるけれども。そんなにうまく行かないと思うな