Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

【メモ】福祉排外主義とエリート

興味深い記事があったので以下にメモ。メルケルが米ハーバード大の卒業式で行ったスピーチについて。遠回しだがそれと分かるトランプ批判を織り交ぜて、卒業式からは何度も拍手喝さいを受けたと。それについて、欧米における福祉排外主義の伸長とエリートの関係について書いてある。

メルケル氏のスピーチが、ハーバード大を卒業するようなエリートに受けがいいのはよくわかる。リベラルな価値に基づいて、多国間主義で人類の課題に取り組み、世界規模で繁栄と平和を実現する。そうした世界を主導するのは、高い教養と専門知識を持ち、多言語を話すエリートたちだろう。

こうした人々の役割を否定するつもりはない。だが、このようなエリートはごく一握りに過ぎない。

先進民主主義・工業国が協力して人類の課題に立ち向かうためには、多数の人々の動向が重要だ。多くの人にとっては、グローバル化や脱工業化の時代に、どのような生活保障が組み立てられるのかが主な関心事だろう。目の前の生活保障がしっかりしていなければ、大きな課題の解決どころではなくなってしまう。

先進諸国の福祉・雇用の現状を考えると、生活保障の問題はより切実に感じられる。長期にわたって福祉のカットや労働市場規制緩和が進められたために、先進国では貧困、格差、不安定雇用が広がっている。

既成政党が福祉や雇用を守れないことに不満を募らせた人々は、右翼政党を支持するようになった。現在の右翼政党は福祉を守ろうとする一方、移民は福祉に「ただ乗り」しているとして、排斥を訴える。福祉防衛と移民排斥を組み合わせる考え方は福祉排外主義と呼ばれ、人々の間に壁を作る。

メルケル氏が言うように、多国間協調によって貿易戦争、地球温暖化、戦争・テロなどの対策に取り組むことは重要だろう。しかし、人類の繁栄と平和を脅かすものとして、貧困や格差が取り上げられなかったのは残念だ。生活保障の不備が福祉排外主義を拡大させ、人々の間に壁ができることで、人類的課題の解決の障害となりうる。エリートが取り組むべき課題として、この点も強調すべきだったと思う。」

概ね同意。福祉排外主義の伸長にはやはり理由があるし、それを単に差別的だと批判して済むような段階にはもうないのだろう。アメリカでは民主党の代表選があり、副大統領だった、ジョー・バイデンがリードしているという。今回は前回のようなサンダース旋風もあまりないようだ。それならAOCが直接出ればいいのでは、とも思うが、その辺りはよく分からん。

熱狂的な観衆を背に「キープ・アメリカ・グレイト」と言ったトランプの相手になるのか。まだ全然よく分からないけど、今回も厳しいんじゃないかと演説の様子を見て直感的に思った。ベト・オルークもなんかあんまりだし。

 

時事ウオッチ:福祉排外主義とエリート=近藤正基 - 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20190608/ddf/012/070/012000c