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映画の感想と勉強日記

【メモ】参議院の制度的課題について

(ひもとく)参議院を問う 複雑怪奇な制度の見直し急務 待鳥聡史:朝日新聞デジタル

 

「東京や大阪などの都市部では、憲法改正に賛成の候補者も反対の候補者も複数いて、それだけでは選挙区で誰に投票したらよいかの基準にはならない。比例代表の投票先政党を決める場合にも、同じ問題に直面する。

 問題の根は、参議院が採用する複雑な選挙制度にある。都道府県ごとに異なる定数の選挙区と、全国集計による比例区の組み合わせは、誰をどのように代表させたいのかが明瞭でない。

 選挙区の場合、定数が大きいほど少数意見も代表されやすくなり、無所属での当選も容易だが、定数が小さいと有力政党が擁立した上位候補だけの競争になる。比例区では政党に所属する候補しかいないが、候補者を出す政党の数は非常に多い。有権者は、自らの選挙区の定数により、また選挙区と比例区によっても、異なった選択基準での投票を求められる。」

参議院の位置づけは、衆議院や内閣との関係から考える必要がある。参議院衆議院とほぼ対等な権限を持ち、予算以外の法案の成否を左右できるほか、問責決議を使って内閣の存続にも影響力を行使できるなど、非常に強力な存在である。そのことは、両院にまたがって活動する政党にも影響を及ぼす。

 1990年代の選挙制度改革によって、衆議院では二大政党制と政党内部での意思決定における幹部主導が目指された。しかし、参議院選挙制度はほぼ手つかずに終わり、80年代までの多党制と政党内部での積み上げ的な意思決定が存続することになった。参議院が強力であるために、この食い違いの効果が日本政治全体に表れている。

 つまり、参議院の存在ゆえに、選挙制度改革の狙いとは異なり、二大政党間の競争関係は弱まり、連立政権が恒常化する。政党内部の幹部主導も貫徹しておらず、参議院議員の発言力はなお無視できない。」

「2007年から13年まで続いた「ねじれ国会」の時期には、参議院や二院制に関する議論が盛んだったが、最近は研究者以外の関心は乏しい。しかし、それは「ねじれ」によって表面化していた制度的課題が解決されたことを意味しない。今回の選挙が、参議院選挙制度や役割についての議論が深まる機会になることを願う。」

待鳥さんが3冊の本を紹介しながら参議院の制度的な課題について論じている。砂原『民主主義の条件』、建林『政党政治の制度分析』、大山『日本の国会』の3冊と、竹中『参議院とは何か』が紹介されていた。どれも日本政治、とりわけ制度面について勉強するのに最適な本だと思う。

参院選関係の記事で最も重要だと思いました。「ねじれ国会」の時に盛んだった制度的課題の話が今回全く聞かれなかったのは違和感あったし、そのような話こそ議論されるべきだと思ってたので。