Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

サウダーヂ 【追記あり】

よくこんな映画が撮れたものだ。日本映画史の中でも重要な一本。点数はつけられない。あのシーンにははっきり嫌悪するが、それも含めて凄まじい映画だった。ちなみに、映画のテーマは「土方・移民・HIPHOP」。僕の知らない「郊外」がまざまざと描かれ、その現実感とクライマックスの非現実感には混乱してしまった。頭がパンクしそうになった。

一年に一度くらいしか上映していないという。また、監督のポリシーからDVD化はしないのだそう。
そして今、彼ら映像制作集団「空族」は『バンコクナイツ』という映画をつくっている。しかも、映画のクランクインと同時にクラウドファンディングを行うという。名付けて「怒りのデスロード方式」だとか。
今回の特集上映の名前も「怒りのデスロード上映」だった。ふざけた命名だと初めは思ったが、この映画を観て以降はその意味がだんだん分かってきた。
おそらく彼らは『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』を観て、観客として衝撃を受けたのだろう。そして、自分たちはこの映画にどうやって応えて、どんな映画を作るか自問自答したのだと思う。それは、バイクと車が爆走する映画を撮る、なんて意味じゃない。彼らなりに、「マッド・マックス」ばりの映画を作るという意気込みという意味だ。

そして、今度の映画『バンコクナイツ』のテーマは「娼婦・楽園・植民地」だという。特報をいくつか観せてもらったが、非常に楽しみだ。なんというか、日本映画の「いまここ」は、インディーズにしかないんじゃないかとさえ思う。


【追記】
上には映画自体の感想は書いてないので、少しだけ。一番印象に残ったのは、タイのパブで働く少女が、土方の男に言い放つ言葉だ。

男は少女に向かって、「タイに一緒に帰ろう。頑張って働けばなんとか暮らせるよ」と言って、再三駆け落ちしようと誘う。でも少女は、「タイに帰ったって、いいことなんか何もないよ。お金稼げない。」と言う。男は苛立って、"I hate money!"と言う。「お金なんて嫌いだ。お前と一緒にいれればそれでいい」というメッセージだ。そんな男に、少女は言い放つ。

I want money!

彼女がなぜタイから日本に働きに出てきたか、また彼女がなぜ日本人になろうとしているか(彼女は二重国籍で、もうすぐタイか日本のどちらかの国籍を選択せねばならない)。この言葉には全てが込められている。これを言い放つ少女の表情と怒気には圧倒された。「幸せになれればいいじゃないか」と甘言で誘う男の空虚さと、タイの少女の現実。これがものすごく説得力を持って迫ってきた。

以上が、映画『サウダーヂ』で最も印象に残ったシーンでした。