製作・監督・脚本:ジョン・ヒューズ
感想から言うと・・・
めちゃくちゃすごい映画でしたよ。その勢いでブルーレイを購入しました。
内容
土曜日の高校、休みの日だから誰もいない。そんなところへ補習にかかった生徒たちが登校してきた。アメリカだから、基本的には親に車で送られて登校してくる。この冒頭のシークエンスで、主要な登場人物5人の身の上がすべて描かれるのがすごい。親との関係が瞬時に分かるのだ。見事な手際で、キャラクターはあらかた分かってしまう。
彼ら彼女らは休日登校で学校に来ていて、図書館に集められて反省文を書かされる。「自分とはなにか?」というお題で何を書いたらいいかよく分からないし、そもそも周りの奴が気になって仕方ない。なんといってもお互いに初対面で、なんとなく居心地が悪いのだ。ビジュアルを見てもらえばわかるが、互いに別のグループに属しているのである。ジョックス、プリンセス、ブレイン、不良、ゴス・・・
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そんな彼らが一緒くたに集めらたから、なんだが「最低の1日になりそうだ…」というところから物語は始まる。
違うグループだからこそ?
最悪の雰囲気で始まるのだけど、嫌な教師を相手に5人でうそを付いたりしているうちに少しずつ会話が生まれてくる。「なんでそういう恰好してるの?」から始まり、皮肉交じりに「お前はスポーツできていいよな」「勉強できていいよな」にいたるところで、5人が抱える悩みが見えてくる。アメフトのスター選手にはスターなりの、がり勉にはがり勉なりの、不良には不良なりの、プリンセスにはプリンセスなりの、ゴスにはゴスなりの・・・。あるんです。このへんの会話が聞いていて、ものすごく痛いんですね。「お前(あなた)も大変だなあ」と相互理解を深めていく様子は感動的で、やっぱり「話せば分かる」のかなと思わせる。
「話せば分かる」?―そう単純な話でもない
本作を実際に観る前に、大方のストーリーは知っていたので、5人が話していくうちに仲良くなっていく・・・そういう単純なものを想定していた。でも、『ブレックファスト・クラブ』は厳しい。映画の終盤、お互いが友達になったころ。
「僕たち、今度の月曜日に学校で会ったらどうする・・・?」という話になる。
そんなあ、せっかくいい感じだったのに。そんなシビアな話するの!?と思う。「う、うん。たぶん声かけるよね」とあいまいな会話になりかけた時、プリンセスは言い放つ。めちゃくちゃはっきり言う。
「声かけるわけないじゃない」
同じグループの女の子に何を言われるか分からないし、そもそも生きてる世界が違うのよ。
な、なんてこと言うんだ・・・。でもそれが現実かもしれない。
そこへ、がり勉君が、目を真っ赤に腫らしながら言う。
「僕は声をかけるよ!」
無視されても、せっかく友達になったんだから、そんな悲しいこと言わないでよ。僕は声をかけるから、かけ続けるから。
泣いた。ここで、泣いた。
がり勉君の純粋さ、ピュアな気持ちがみんなの気持ちを動かして、お互いにおいおい泣くシーンは、ほんとうに心が痛くなった。でも、とてもリアルで素晴らしいと思った。
こんなセリフ、こんな脚本は普通書けないですよ。だって、ふつうの大人から見るとしょうもない小さい小さい話にしか思えないんです。いま考えると、高校生の悩みなんてちっぽけじゃないですか。「月曜日に会ったときに声をかけるか」なんて問題を、それこそ世界が終わってしまうような深刻さで話し合うんです。でも、当の高校生にとったら、これほど深刻な問題はないでしょう。それを、ちゃんと深刻に描いているから、これは素晴らしい。凄い。
『桐島、部活やめるってよ』の源流ですね。
観るときのポイント
映画史に燦然と輝く名セリフ「大人になると心が死ぬ」がいつ出てくるか、要チェック!
*1:
Jocks ジョックス・・・体育会系のいじめっ子。主にアメフト部員。アメリカでは高校のアメフトの試合を町中の人間が見にくるような地域も多く、コミュニティに支持されているという意識があるため、文科系の生徒に子どもっぽい嫌がらせをし放題。だが未来は決して明るくない。トレードマーク:校名のロゴ入りスカジャン、笑いながらターゲットをロッカーに叩きつける Queen Bee 学園女王/プリンセス・・・学内のヒエラルキーのトップに君臨する女子。当然のごとくチアリーダー(まれに演劇部の女王)であり、勝ち組の男子の中から好きな子を彼氏に選ぶ権限を持っていて、年度末のプロム・クイーンの座は約束されている。トレードマーク:ブロンドの髪、常に腰にあてている手 Nerds/Geeks/Brain ナーズ/ギークス/ブレイン・・・ナーズは自分の興味対象以外はかまわないオタクのこと。文科系の負け組を表す言葉として80年代に一世を風靡した。…ブレインはナーズの中でも特にガリ勉を指す。…ギークはさえない文化会系の中でも、特にコンピュータおたくを指す言葉。 Gorh ゴス・・・目の周りを黒く縁取り、黒い服と暗黒方面のカルチャーを好む種族。日本のゴスロリとは趣味のベクトルはやや異なるが、はぐれっ娘という校内の立場は一緒。 解説はすべて、長谷川町蔵・山崎まどか『ハイスクールU.S.A.』(2006、国書刊行会)「これが”ハイスクールU.S.A.』だ!」より引用