地球温暖化によって、北極圏の氷が溶けている。それによって、北極圏を経由する航路が開拓されつつある。
海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ジェイムズスタヴリディス,北川知子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/11/20
- メディア: 文庫
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この本では、アメリカ海軍の提督を務めた軍人が「古いと思われる海がいかに大切か」をコンコンと語っていた。サイバースペースとか色々言うけど、海によって世界は繋がっており、輸送の手段としては船がずっとナンバーワン。陸上でより、海の方が偶発的な衝突とかけっこうあるし。
何より、アメリカが覇権国として振る舞うことができたのは「海」を抑えたから。戦前は日本と太平洋を二分割していた、日本との戦争に勝ってからは太平洋をアメリカが抑えた。太平洋を抑えていることがアメリカのパワーの源だったと。だからこそ、中国の南シナ海への浸出はアメリカの覇権に対する挑戦と見做される。
そして、この本では北極圏の重要性が指摘されていた。ロシアの砕氷船の数は圧倒的で、中国も投資してるがアメリカは全然ダメだと。
今年8月、トランプ大統領による「グリーンランド買収の意向」が報じられた。
以下の記事は、グリーンランド、北極圏の重要性と安全保障上の問題がレポートされていて面白い。
気候変動と戦う:クライメートポリティクス 氷解、群がる大国 グリーンランド二つの商機(その1) - 毎日新聞
北極圏は気候変動の影響が顕著に表れる地の一つだ。氷解は過去数百年で例のない速度で進んでいるとされる。日本の6倍の面積を誇り「世界最大の島」と呼ばれるグリーンランド。先住民族のイヌイットを中心に約5万6000人が暮らしている。
米地質調査所(USGS)によると、北極圏を覆う氷の下には地球上で未発見の天然ガスの30%、石油の13%が眠る。金、ダイヤモンド、亜鉛、ウラン、レアアースなど未開発の鉱物資源も豊富とされる。氷解により、資源の採取が可能になりつつある。また、海上を覆う氷の消失で、北極圏を通る新しい商用定期航路が確立されれば、パナマ運河やスエズ運河を経由しないことで紛争などによる地政学的リスクを軽減できる。航行日数削減なども期待される。
気候変動と戦う:クライメートポリティクス 氷解、群がる大国 グリーンランド二つの商機(その2止) - 毎日新聞
1940年、米国はナチス・ドイツのデンマーク占領を機に安全保障上の戦略から領事館を開設。その後、グリーンランドを保護下に置き、各地に軍事基地を設けた。領事館は53年に閉鎖され、この建物は現在、地元行政機関の事務所となっている。
クラルップさんは、失敗に終わったトランプ米大統領のグリーンランド「買収」案は荒唐無稽(むけい)ではないと指摘。北極圏進出を加速させる中国とロシアへの警戒感が背景にあると言う。
元デンマーク海軍少将で北極圏の安全保障専門家のニールス・ワング氏は、英紙サンデー・タイムズに「トランプ氏のアプローチはばかげているようにみえるが、中露に対し、『グリーンランドに手を触れるな』という本気のメッセージを送った」と指摘。米国務省は、再び開設することになったヌーク領事館を「米国の国益を増すための有効な基盤」と位置付けている
記事の冒頭で、地元紙の編集長が「地政学的にはグリーンランドはデンマーク領ではなく、昔も今も米国の一部だ」と語る場面がある。トランプのグリーンランド買収発言は突破ではなかったのだ。今後、北極圏は重要性が増していくのがよく分かる。
中国の「一帯一路」、インド・日本・アメリカ・オーストラリアの「インド太平洋」など様々な戦略が語られる。今年5月にあった、ポンペオ国務長官の発言も重要だ。
ポンペオ米国務長官は今年5月、北極圏に領土を持つ8カ国で組織する「北極評議会」で演説した。「北極圏は覇権争いと競争の場と化した。(同時に)チャンスと富の最前線にある」。こう述べたうえで、北極点を含む海域を経済水域とするロシアの主張を「違法」とけん制。さらに、北極圏の開発を進めようとする中国についても「北極圏と先住民の地域社会が債務漬けになってもいいのか。北極海を軍事的な緊張が続く新たな南シナ海にしたいのか」と批判した。
アメリカで包括的な戦略みたいなのが提唱されているのか、きちんと調べていないので分からないけど… 半世紀ぶりに領事館を開設したというのは重要な動きですね。