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映画の感想と勉強日記

れいわ現象=左派ポピュリズム?

れいわ新撰組参院選比例区228万票、2議席を獲得した。選挙前からTwitterなどで動画が拡散されていた印象もあり、一部では「ブーム」とも呼ばれた。選挙戦の途中から「ポピュリズムだ」という批判もあり、それに対して「ポピュリズムではない」という批判も行われた。ただ、「ポピュリズムだ」と批判したというより、「ポピュリズム」という用語を使って分析しているに過ぎないのに、「ポピュリズムというのは何事か」というような反応もTwitter上で一部見られたと思う。そこで、比較的冷静に議論したものとして、中公新書ポピュリズムとは何か』の著者である水島治郎(千葉大教授)の分析を紹介したい。

digital.asahi.com

 

朝日新聞に掲載されていたインタビューより引用する。重要だと思った点は太字にしました。


消費税廃止を訴え、大企業の課税強化を唱える――。れいわ新選組の主張は欧米で広がる左派ポピュリズムの流れの日本版と言えるでしょう。

 日本のメディアでポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されますが、研究者でこの訳語を使う人は今、ほとんどいません。ポピュリズムとは、既存の政治がピープル(人民)を置き去りにしているという主張です。権力を持つ「エリート」が批判され、政治家、官僚、メディアが人民の「敵」となる。いわば「人民第一主義」です。また「左派」というのは社会的な弱者の声を重視する傾向がありますが、下からの政治と考えた方がわかりやすいでしょう。

 欧州の左派ポピュリズムには、財政規律を重んじるEU(欧州連合)の枠組みの下、各国が厳しい緊縮財政を強いられてきたという文脈があります。日本が同じような緊縮財政だったわけではありません。ただ、格差が拡大し、政治不信が高まっているのに、生活に直結する税金についての各党の立ち位置は大差がないように見える。「消費税廃止」を象徴的に打ちだした、れいわに新鮮味があったのは事実だと思います。

 しかし、私が今回最も注目したのは、重度障害者の2人を比例の特定枠にして国会に送ったことです。リベラル派は多様性の尊重を訴え、当事者の声を重視するとは言うものの、体を動かすのも大変な当事者を、国会へとは思いつかなかった。当事者に近い人、軽度の人からと考えていたと思う。ですが、どうでしょう。当選が決まると、1日の国会開会にあわせ、議場は改修され、介助の費用負担の議論が始まった。健常者が独占してきた国会が、インクルーシブ(包摂的)な空間へと一歩を踏み出したのです。

 実際、海外メディアはここに注目して報道しました。もともと特定枠は自民党が合区対策で比例区に回る候補者を救済するため、党利党略でつくった制度です。それを逆手にとったのは見事としか言いようがない。

 その意味で山本太郎という政治家は、政治のイノベーター(新しい作り手)と考えるべきです。1990年代半ばから日本では二大政党制をモデルにした政治改革が進みました。政治家が現実的でよい政策をつくれば有権者が支持し、多数派を握れば政治を動かせるという考え方が背景にある。裏を返せば、そうでなければ動かせない、と。山本氏という存在は「本当にそうなのか」という「問いかけ」です。わずか2議席でもこれだけのことができるのですから。民主主義の実践に「実験」は欠かせません。成功もあれば、失敗もある。しかしその中から新時代を拓(ひら)く動きが生まれてくる。次はどんな実験が始まるのでしょうか。

 

 けっこうバランスのとれた、冷静な評価だと思った。同じ記事の中で『世論の曲解』の菅原琢政治学者)がれいわの実像は「オーナー依存のミニ政党」だと喝破していて、それも事実だと思うが、水島が指摘する「障害の当事者を国会に送ったのはリベラルの誰も思いつかなかった」というのはその通りだと思った。実際、大きく議論されているし、参院選後の話題を大きくかっさらったのは事実。そして、それはいいことだと思う。

それとやはり重要なのはポピュリズムの定義で、「人民第一主義」という言葉はわかりやすいなと思った。Twitterを見ていて驚いたのはれいわ支持者の中でも「ポピュリズム」という言葉に対して拒否感が見られたことだ。「左派ポピュリズム」が「MMT(現代貨幣理論」とかのキーワードとともに最近紹介されていたので、「左派」をつければむしろ褒め言葉になるのかな、と思っていたが。まだあんまり人口に膾炙していないのか。そりゃそうか。

ところで、TBSラジオの「Session22」がすぐに2人へのインタビューを行い、それが詳細に記録されていた。

www.tbsradio.jp

そして、2人については立岩真也のHPにかなり詳細な情報が載っている。

www.arsvi.com

www.arsvi.com

 

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