Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

奇跡のレッスン〜世界の最強コーチと子どもたち〜バスケットボール編

とてもいいドキュメンタリーを見たので、その感想を書きます。NHK製作の「奇跡のレッスン バスケットボール編」です。



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NBA史上最低身長160cmながら、14年にも渡って活躍したマグジー・ボーグスが、東京のある中学校にやってきて1週間の臨時コーチをする。


部員11人の彼らは個性豊かだけど、少し抑圧的なコーチのもと(これは僕の感想です)、どこか自信なさげにプレーをしていた。怒られないように、怒られないようにするあまり、思い切ったプレーができていないのだ。しかも、楽しそうにバスケをしていない。練習中も声は少なく、元気なプレーもない。

それを見たマグジー・ボーグスは、「たのしもう!」と声をかける。そこで楽しそうな練習メニューを導入すると一転、彼らは笑いながら一生懸命取り組むようになる。根は真面目な生徒が多く、飲み込みも早い。

マグジー・ボーグスがコーチとして赴任して4日目、彼は選手たちにある作戦を提案する。学校名をとって、「ハクヨー作戦」。どんな特別な作戦だろう…と思ったがそれは、とても単純なものだった。スクリーンを使って外のプレイヤーをフリーにさせたあと、そのプレイヤーにパスをして3ポイントを狙う…というもので、最も基本的な作戦のひとつだろう。しかし、マグジー・ボーグスが教えると、それはミラクルな作戦となる。
例えば、パスをするふりをしてドリブルで切れ込む。シュートを打つふりをして、中にいるプレイヤーにパスをする、など。応用をどんどん効かせていき、選手たちの潜在能力を引き出していく。この時点で、初めは頼りなく見えたプレイヤー達が見違えるようにうまくなっている。彼らは即時に判断し、最適なオフェンスを選択できるようになった。

7日目、強豪校との練習試合が設定されていた。去年、1勝もできなかった相手に通用するのだろうか…。

と、まあこんな感じの話です。以下、感想を少し。

特によかったのは、選手たちの抱える悩みが次第に解決されていき、それが試合の中で完全に解消されること。クライマックスを強豪校との試合に持ってくる辺り、とてもドラマチックな構成です。
選手たちは本当に色々な悩みを抱えています。例えば、個々の選手たちは、自信がなくてシュートが打てない、ひ弱でとにかく自信がない、キャプテンだけどうまくまとめることができない…等。最後の試合に向けて、彼らの悩みは明かされていきます。実生活に密着したシーンも多く、感情移入してしまいます(個人的には、バスケ部に所属していた、自分の中学生の頃を思い出してしまいました)。

いざ試合になると、選手たちは見違えるプレーを連発します。
リバウンドをとっても仲間にパスしていた選手は、強引にシュートを打つようになる。
ひ弱だった小さな男の子は負傷を抱えつつも、相手に食らいつく(痛そうにしている彼に、マグジーボーグスが「お前は必要なんだ!(We need you!)」と励ますのですが、これには泣いちゃいました)。
そして、まとめることのできていなかったキャプテンはプレーで引っ張り、仲間に声をかけるようになる。とても頼もしく見えます。

選手たちが悩みを解決できたのは、マグジーボーグスの指導もありますが、NHKスタッフの取材力もあると思いました。選手たち自身や親への取材を通して、彼らが何に悩んでいるのかが明らかになってくるんです。そして、彼ら自身もそれを認識し、殻を破ろうと努力していく。これはやはり、丹念な取材がなせたワザかなと思います。

そして、やっぱり一番感動させられたのは最後の試合です。親御さんたちは大号泣で、さもありなんといった内容でした。めちゃくちゃいい試合で、応援に来ていた女バスの子たちも「初めてかっこよく見えた!」なんて言っていて、とても微笑ましかった。

プロデューサーの方自ら指摘しているように、まさにバスケ版『がんばれ!ベアーズ』(1976年のアメリカ映画)といった内容でした。『がんばれ!ベアーズ』はとにかく最高の映画なのですが、それに似ていてかつ超えるような部分もあり驚きました。英語の字幕をつけてドキュメンタリー映画にすれば、どこかの映画祭にでも出展できるレベルだと思いました。

再放送の再放送だったので、次見られる機会があるかは分かりませんが…。とにかく印象的だったので、感想を書きました。