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Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

真魚八重子『映画系女子がゆく!』 (青弓社、2014年)

書評 桐島


映画系女子がゆく!

映画秘宝のムックや、朝日新聞の映画評でおなじみ・真魚八重子さん初の単著。映画秘宝では手際のいい映画評に好感を持っていたし、朝日新聞での映画評も安定感がある。「映画系女子」という、一見すると引っかかる書名に惹かれて購入。「女子」という言葉への違和感、あるいは「文化系女子」というカテゴライズへの違和感もあろう。だが、それをむしろ直視するという姿勢で本は進んでいく。

本書は、映画批評によくあるカメラワークや演出の批評ではなく、あくまで映画に登場する〈女子〉たちの心情をつぶさに分析していく。「映画を通して、女性たちの謎めいた涙や苦悩や喜びの理由を、言葉に置き換えることが本書の試み」である。また、時折挟まれる著者自身の体験は読んでいて面白いし、自らを投影させながら論じるスタイルは説得力がある。

とにかく、観てもよく分からなかった映画について、著者の視点を通して初めて見えてきたものがあった。

例えば、塩田明彦『害虫』についての批評(第14章)は出色である。主人公の顛末については『天使のはらわた 赤い教室』も引き合いに出されるとわかりやすくなった。ロベール・ブレッソン監督『ラルジャン』という映画も観たくなった。「堕ちる前に、墜ちてやる」という言葉が印象的で、あの宮﨑あおいの雰囲気をうまく伝えている。

他に、『桐島、部活やめるってよ』と『500日のサマー』が取り上げられる第7章「それで、そのとき文化系男子は何しているの?」もよかった。ナード(オタク系)男子たちに対する実践的なアドバイス(81-2ページ)も必読!(勉強になります…) この章では、ジョン・カサヴェテス『ラヴ・ストリームス』という映画が観たくなった。

このように、一度は観たことのある映画(他に、『プラダを着た悪魔』や『ブラック・スワン』等)が深く掘り下げて論じられている。〈女子〉という一本軸を引いて。そのために、今までよく分からなかった・分かっているつもりだった映画の見通しがよくなっているのだ(そして、ナードな自分は女性の心情を全然分かっていなかったのだと自省するなど)。これは批評を読む醍醐味だと思うし、さらに新たな映画との出会いも巧みに用意されている!

全映画系女子、そして男子は必読である。
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