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映画の感想と勉強日記

【メモ】地方自治

北村亘「大阪における政令指定都市制度の課題と対応」連合大阪「大都市制度等に関する研究会」,2015年02月

北村先生の論文。整理されていて分かりやすい。「5・17住民投票」前の論文だが、大阪市がそもそも抱えている大きな問題が分かる。
2010年に出てきた「都構想」の問題提起は評価しつつ、その後の変遷を辿る。つまり、都構想のそもそもの目的であった「昼夜間人口比の呪縛から逃れて受益負担の均衡を回復しようという試み」(p.11)は一定の評価を下している(そして、これは僕自身の実感としてもよくわかる)。
ただ、それを解決するにはやっぱり周辺自治体を巻き込まないと、どうにもならない話なんだなと。その点、他の市を巻き込むことを諦めて、大阪市のみを5特別区に再編する案は当初の目的からも離れてしまった。
実感として分かるっていうのも、大阪市北摂地域(豊中市箕面市)を通学で往復しているから(僕は逆パターンですが)。明らかに税収に差があるの分かる。北摂ってデカい家多いしね。例えば、西川きよしは家が箕面市にあって、大阪市内にあるなんばグランド花月で彼が働いていても、彼の税収は箕面市に入る。西川きよしのような人が90万人いる(大阪市の昼間の人口が夜間より90万人多い、つまりそれだけの人が大阪市に働きに来ている)。
「260万人の大阪市民で、90万人余計な行政需要に対応している」(p.6)ということね。この問題はやはり厳然として残ってる。

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補足資料:野村総研資料 PRESIDENT 2009 年 6 月 29 日号 赤い点:居住者の富裕の程度(濃い赤ほど富裕) 青い点:居住者の貧困の程度(濃い青ほど貧困)
また、リンク先の13-14ページにある図表を少し参照してみてほしい。かなり驚きの結果である。

政令指定都市

同じ筆者の『政令指定都市』を読んでいるが、大阪市は突出して問題が山積しているのがわかる。同書の第5章「揺らぐ政令指定都市-大阪市を中心に」は、驚きのグラフを多く掲載している。このグラフを一見するだけで、「政令指定都市」が本来的に持つ問題が、特に大阪市において先鋭的に表れていることがわかる。というか、過剰なほどグラフが突出している。
昼夜間人口比率は他の政令市と比べてダントツに高い(p.173 図表5-1)。少子高齢化も相当進んでいるし、生活保護率も高い(p.177-8)。また、個人市民税収の占める割合が低く、法人市民税や固定資産税などの割合が最も高い(p.184-7)。つまり、特に景気に左右されやすい政令市であり、「社会経済的な脆弱さ」が浮き彫りになっている。他にも驚きのデータが数多く掲載されている。
これらの重要なデータを参照するだけでも面白い本です。とりいそぎ、大阪について書かれた第5章と第6章を読んだので、他の章は後々ゆっくり読みたい。
ちなみに僕は、地方自治行政学を専門的に勉強しているのではないですが、やはり身近に自分の問題を考えるとき、地方政治に関する理解は欠かせないと思う。普段の住民サービスに関わってくるから。通学の電車の中で数章読んだだけですが、本書は大いに助けになりました。