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Hooney Got His Pen

映画の感想と勉強日記

京都みなみ会館オールナイト上映に行ってきた。

アメリカン・ニューシネマ 映画 オールナイト上映

オールナイト上映で映画を4本観てきた。場所は京都みなみ会館

 
オールナイトで映画を観てみたかったのと、『ハロルドとモード』をスクリーンでどうしても観たかったので。
 

1本目 色即ぜねれいしょん(2008)

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あんまり面白くなかった…。けっこう笑ったんだけど、単発でしかないというか。ヒロインには可能性を感じたが。
高校生×ロック×峯田和伸にしといたらとりあえず面白くなると勘違いしてると思った。
問題は、主人公の3人組の悩みが、いまいち見えてこないこと。小出しにはされるのだけど、クライマックスの文化祭のシーンでそれがどう昇華されたのかいまいち分からない。なんとなくいい感じ(?)になって終わってしまった。
「なんとなくいい感じにしたい」というのがこの映画の要約だと思う。でも、初っ端から懐古的というのがよくない。
主人公たちがフリーセックスを目指して隠岐の島に行くシーンがあって、そこでヒゲゴジラ(峯田和伸)と出会って心を通わせるシークエンスがある。そこはまあまあ楽しいんだけど、その場面の30分後くらいには回想シーンが峯田和伸の歌とともに流れる。
いや、思い出にするの早すぎや!と思わず突っ込んでしまった。中高生の時代に、「こういうのって青春だよな」とか言いながら、「いかにも」なことをする寒さをこの映画自体がやってしまってる感じが寒かった。
あと、主人公の彼自体がミュージシャンで普通に歌がうまかったのがいまいち…。下手くそでもなんでも、声を張り上げて歌うのなら感動するんですが、最後の文化祭のシーンは普通にうまくてズッコケそうに…。うーん。
 
あと、「文科系と不良が和解した!」というストーリーが最後になって付け加わった感じがする。映画全編にわたって、そんなに緊張関係があったとは思えないし。
同じ京都が舞台で、描かれる年代も同じ『パッチギ!』と比べたら、完成度に雲泥の差があるなあ。『パッチギ!』の緊張関係は凄かった。とても厳しいものがあった。比べたら駄目かね。でも、やりたいのはああいうことだと思う。ということで・・・
色即ぜねれいしょん』を観るなら、『パッチギ!』を観ましょう!
いきなり辛口なんですが、好きな雰囲気の映画だと最初に思っただけに、気になるところが多かったんです。
 

2本目 ハロルドとモード/少年は虹を渡る(1971)

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これは、本当に素晴らしい。
初めて観たのは約1年前だった。その時はけっこういい映画を観たなくらいだったけど、1年の間で何度も思い出すことがあった。だんだんと好きになって、いまは大好きな映画となっている。そんな映画をスクリーンで観れるとは!京都みなみ会館の館長が『ハロルドとモード』を大好きらしく、今回の上映に選んだらしい。
館長ありがとう!
35mmフィルムの上映で、古い映画だから所々映像が乱れたりするんだけど、味があってとてもいい。音楽がずっと鳴っている映画だから、映画館の音響も映画に適していてよかった。
 
色即ぜねれいしょん』の後だったから、余計にこの映画の素晴らしさが際立っていた。ともに1970年代を描いている映画だけど、やっぱり当時の映画だし、監督のハル・アシュビーは本物のヒッピーだし、本物度が違う。
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少しストーリーを説明すると…
本作は、自殺にとりつかれた19歳の少年・ハロルドと、80歳を迎えるファンキーばあちゃん・モードの恋模様を描く。
 
好きなシーン
モードがハロルドに、「あなた、なにか楽器はできる?」と訊く。ハロルドは楽器なんてできないと応えるのだが、モードは、楽器なんて簡単じゃない!弾けばいいのよと豪快にピアノを弾いて、決して上手じゃない歌を歌う。
これこそ、1970年代のロックの精神が反映されたシーンではないかな。でも、問題の色即ぜねれいしょん』では峯田和伸が「上手くなくてもいいんだよ」とか言いながら、(ある程度)上手にギターを弾く。で、ギターを始めたばかりで上手くない設定の主人公もミュージシャンである。それじゃあだめじゃないかな…。
モードが「下手でもいいじゃん!」とピアノをじゃんじゃん弾くシーンがロックなのであって、『色即』は全然ロックじゃねえよ!と思ってしまった。
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ハロルドは「なんだ下手くそでもいいのか!」と弦が4本しかない楽器を演奏し始める。そして、最後のシーン。ポロンポロンと鳴らすハロルドの姿はとても素晴らしい。
 
続けて観たせいで、どうしても比較してしまう…。
 
過去を垣間見せるシーン
『色即』での峯田和伸はヒッピーなのだが、どうやら昔は学生運動をしていたことがわかる。「ヒゲゴジラ(峯田和伸)は全共闘だったの?」「想像できる?お前らの誰かが死ぬって考えてみ?」というやりとりがあるんだけど、いちいち薄っぺらいというか……

登場人物に厚みを持たせる過去の語りにおいても、『ハロルドとモード』は違う。

実は、『ハロルドとモード』のモードおばあちゃんも運動をやっていたらしい。でもその情報は断片的にしか示されない。ウィーンに住んでいたこと(→最近の『グランドブダペスト・ホテル』で描かれた多文化の入り混じった理想の街に、モードは住んでいたんじゃないかな。)、ウィーンを追われてアメリカに命からがら逃げてきたこと、夫を戦争で亡くしたこと、自由と平和と平等を求めて闘っていたこと…なんかをポツリポツリと話すんだけれど、どれも断片的ではっきりとは話さない。少し昔を懐かしむようで、説教垂れるような感じではない。だから、初見では聞き逃してしまうと思う。今回改めて見直して分かったことが多かった。
そしてあのシーン。モードの腕に番号?の刺青がある。そうか、モードはユダヤ人で、強制収容所に入れられていたのではないかということが、ほんの数秒のカットで示唆されるのだ。見逃してしまうところだけど、何回か観てると気づくと思います。
 
映画館のスクリーンで観ると、また新たな気づきがあった。やはり何度も観るに値する、本当に素晴らしい映画です。
 
おまけ
僕の好きな映画評論家、柳下毅一郎氏がリバイバル上映時のチラシに寄せた文章がとてもよかったので引用しておきます。
引用元↓d.hatena.ne.jp
 これは一九歳の少年と七九歳の老婆のラブストーリーである。
愛など成立するはずのないところで生まれるラブストーリーだ。
奇跡を信じていない人に訪れる奇跡であり、死しか信じられない人間が生きる意味を見つけるまでの物語である。これはあなたのための映画なのだ。(柳下毅一郎
 
 
3本目 フローズン・タイム(2006)
これは、こちらのブログで。↓
 フローズン・タイム(2006) - Hooney Got His Pen 
 
 『フローズン・タイム』の主人公が最後に作品を作り上げるのは感動的でした。その点、『色即』はやっぱり弱いんだよなあ・・・。最後の文化祭シーンでカタルシスが来ないとなあ。歌詞が聞き取りづらいという問題もあったが。文化祭シーンで、峯田の歌と主人公の歌がシンクロしながら回想シーンとかでもよかったのでは。観客を映すのも結構しらけたし。
4本目 人のセックスを笑うな(2007)
人のセックスを笑うな』は、冒頭1時間を観て、ふつふつと怒りが……。長回しと、それっぽい音楽をかけとけばいい感じになると勘違いしてるというか・・・。しかも刺激的なタイトルの割りに、松山ケンイチ永作博美の絡みが薄い。その点ものすごく期待外れだった。(その点『フローズン・タイム』を見よ!!)
 
『日常系ほのぼの邦画』って苦手です。 映画はワクワクかドキドキが欲しい。
見せ場を作ってほしいのだ。まあ、よく眠れる映画だったので悪くはなかった。

 でも、4本とも激しい映画が続くとそれもそれで問題か。塩梅ってけっこう難しそうですね。
 
総じて・・・
結構厳しいことも書いたんですが、とても楽しい映画体験でした。『ハロルドとモード』と『フローズン・タイム』をスクリーンで観れたので、もうそれだけで大大大満足です。比較しながら観れたのは楽しかったし、『色即』は初めは楽しかった。
コーヒーとベーグルもおいしかったし、また参加したいと思います。