感想
めっちゃよかった。以上!とはいかないので…
いろいろ繋がった!
ウェス・アンダーソン自身の『ファンタスティック Mr.FOX』と同じような話だと思う(『そして父になる』映画!)。その系列には『イカとクジラ』があるなと思ってたら、脚本にノア・ボーンバックが参加してた。『イカとクジラ』は好きなので、なんだかこういうのが繋がると嬉しい。
アメリカンニューシネマの影響?
ウェスアンダーソン自身、アメリカン・ニューシネマが大好きだという。
ちょい役で出てくるキャストのバッド・コートって聞いたことあるなと思ったら、『ハロルドとモード』の少年だった!
影響というのか分からないけど、自分の好きだった映画に出てくる俳優を自らの映画に出演してもらうってステキな話だと思う。タランティーノもよくやるよね。
Bud Court バッド・コート
真ん中のハゲのおっさんが、あの美少年だとは!
オフビートな演出
ウェス・アンダーソンの最大の特徴とも言っていい、オフビートな演出が随所に冴え渡る。普通に演出したら盛り上がりそうなガンアクションが、どうもマヌケになるのだ。ビル・マーレイとの雰囲気も相まって、爆笑してしまった。しかも、イギーポップの"search and destroy"が流れるのに!音楽が鳴り始めた時はめちゃくちゃ燃えたのに、どんどんマヌケで面白くなってくる。
ビル・マーレイ、面白すぎる
批評を読んだ
シネマの記憶喪失
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/01
中原「ニコラス・ローグを意識したところがないですか?」って聞いたら、向こうがすごく驚いて、「実はニコラス・ローグが出演するはずだった」って言ってた…
阿部 (引用者注:ビル・マーレイを指して)こういう、ただいるだけで説得力を持っちゃうキャラクターというのは明らかにアメリカ映画伝統のものだよね。別に何も言わなくていい、ただムスッと黙ってそこにいるだけで、すごい説得力がある。
…
青山さんが「これは日本では撮れないよ。なぜなら日本にビル・マーレイはいないから」って言ってるぐらいでさ。
…
小道具から脇役に至るまで、とにかく隙がない。うまくいろんなものを配置している。僕が『映画覚書Vol.1』の中でも執拗に追求してきた「擬似ドキュメンタリー問題」に対しても、最良の形で解答が出されたと思った。「これはあくまでも上演されているものだ」というフレームを明示することにこだわっているんだよね。
2人ともものすごく高く評価していて、6回は見返したという。ビル・マーレイ評は何度も頷いた。本当に、「いるだけで説得力を持つ」キャラクターで存在感が抜群なのだ。だからどの映画に出ていても、役名ではなく「ビル・マーレイ」という俳優名で覚えているのである。
「これはあくまでも上演されているものだ」というフレーム
というのも重要。ビル・マーレイたちは海洋探検隊で、そのドキュメンタリー番組を自分たちで作っている。その様子を我々は見ており、ドキュメンタリー番組自体であり、またドキュメンタリーのメイキングでもある。という、少し複雑な構造である。こんなこと考えなくても気軽に見れるのだが、最後の場面でハッとさせられる。
僕は「一番好きな映画のジャンルは?」と聞かれたら「ドキュメンタリーです」と答える。ドキュメンタリーと一口に言っても、その幅はとても広い。この映画もその幅に入ると思う。ということで、タグをドキュメンタリーにしておきます。