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映画の感想と勉強日記

【メモ】萩生田「身の丈」発言について竹内洋へのインタビュー

今朝の朝日新聞に載ってた、萩生田文科相「身の丈」発言に関する竹内洋へのインタビューがよかった。

(耕論)「身の丈」発言 松岡亮二さん、竹内洋さん、斎藤孝さん:朝日新聞デジタル

 

近代日本の建前が崩れた 竹内洋さん(関西大学東京センター長)

 明治以降の日本には、誰でも試験でいい点を取れば立身出世できるという「ジャパニーズ・ドリーム」がありました。受験が「身の丈」に左右されないという建前が重視されており、萩生田文科相の発言は、その近代日本の伝統に反するものといえます。

 かつての学習院は上流階級の子弟中心でしたが、中等科を卒業して旧制高校を受験しても、合格率は高くありませんでした。華族の子であっても、優遇されることはなかったわけです。

 それが大正から昭和に入ると裕福な家庭の方が受験に有利という傾向が顕著になります。家庭に本が多い、親が勉強を教えるといったことが子の学力につながるので、必然的にそうなる。明治維新で生まれた機会の均等という建前が徐々に崩れていきました。

 しかし、敗戦で誰もが貧乏になったことで、またリセットが起きます。戦後しばらくの間は、難関大学でも貧しい家庭出身の学生が多くいました。明治維新や敗戦という「ガラガラポン」があったことで、機会の平等が担保されたという側面があるんです。

 明治維新から敗戦までが77年、敗戦から今年で74年ですから、経済的理由で教育格差が広がってきているのは、ある意味、必然ともいえます。

 さらに大きいのは、中央と地方の格差です。旧制高校は一高が東京、二高が仙台、三高が京都、四高が金沢、五高が熊本と各地に分散してつくられました。近代の日本には全国で優秀な人材を育成するという理念がありました。戦後も各都道府県に国立大学が置かれ、広く人材を育てる伝統は受け継がれました。

 しかし今はそれが崩れ、東京と地方では「身の丈」が違う社会になってしまいました。

 右肩上がりの時代は、格差があっても、努力すれば追い越せるという希望が持てました。しかし低成長の時代になるとそれが難しくなる。格差解消の手段として、米国のように、経済的に恵まれない学生らを優遇するアファーマティブ・アクションが言われつつありますが、萩生田文科相の発言はそうした現代の潮流にも逆行しています。

 一方で、格差を容認するような空気も生まれています。昔は、苦学して東大を出て、官庁や大企業に就職すると、裕福な家庭出身の人より高い評価を受けました。いわば「後払いされるアファーマティブ・アクション」です。親が偉いと「七光り」といわれて苦労するくらいでしたが、今は「サラブレッド」として評価されたりします。

 受験で競い合うことで、国が良くなっていく時代は終わりました。でも、その次が見えてこない。萩生田発言を契機に、今後の教育のあり方を議論すべきだと思います。

 (聞き手 シニアエディター・尾沢智史)

    *

 たけうちよう 1942年生まれ。専門は教育社会学。著書に「立志・苦学・出世 受験生の社会史」「教養派知識人の運命」。

 

「しかし、敗戦で誰もが貧乏になったことで、またリセットが起きます。戦後しばらくの間は、難関大学でも貧しい家庭出身の学生が多くいました。明治維新や敗戦という「ガラガラポン」があったことで、機会の平等が担保されたという側面があるんです」とか、

明治維新から敗戦までが77年、敗戦から今年で74年ですから、経済的理由で教育格差が広がってきているのは、ある意味、必然ともいえます」とか、ハッとさせられる。

 

 

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【メモ】チケット転売、ダフ屋問題の記事

ダフ屋のいないコンサートチケット販売は可能か? | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス

経済学の中でも「マーケットデザイン」という新しい学問分野の専門家である坂井豊貴教授は、「ダフ屋は悪くないが、ダフ屋を必要とするいまのチケット市場の出来はひどく悪い」、「適切にデザインされたオークション市場でチケットを売れば、アーティスト側は儲かるし、ファンはダフ屋に仲介料を払わなくて済むようになる」という。

 

もし私がコンサート事業者ならば、自分でダフ屋をやろうとするだろう。あるいは、せめてダフ屋に「傘下に入れよ」と垂直的合併を持ちかけて、彼らに良いチケットを優先的にまわして、利益の一部を自分によこせと言うだろう。実のところ私は「一部をよこせ」なんて可愛いことを言うつもりはない。チケットの独占販売者である私は、たくさんいるダフ屋たちに「良いチケットをまわしてください競争」をさせて、ダフ屋の利益をあらかた自分のものにするつもりだ。
 どうしてコンサート事業者が自分でダフ屋をやらないのか、私にはよく分からない。でも、やればいいのにと思うし、やりたいはずだと思う。CDが売れなくなって久しい今日、コンサートで利益を上げるのは音楽業界にとって死活的に重要なことだろう。コンサート事業者には、ダフ屋が手にする「不正な」利益は自分のもとに来るべきだという気持ちがあるはずだ。

 

これに対する安易な批判として「オークションだと金持ちしかチケットを買えなくなる」というものがある。しかし、そもそもコンサートとは、ファン以外の人にとっては、長時間にわたり身柄を拘束され、好きではない音楽を聴かされ、なのに周囲は盛り上がっているという、苦痛きわまりないイベントである。ヒマな金持ちのなかには物見遊山でコンサートに訪れる人もいようが、そんな珍しい属性を持つ人が多量に押し寄せてくるアーティストがどれほどいるだろうか。「オークションだとファンのなかでお金をたくさん使う気のある人ほどチケットを買いやすくなる」と言うべきである。